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ヒロインのハンは、あるパーティで新聞記者のマーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)と出会う。戦争未亡人として恋愛を拒否していた彼女なのに、意外に簡単に恋におちてしまう。ホールデンの強烈なアプローチがナンパな印象。
しかも彼は妻帯者であることが判明するので、悲恋のオープニングとしてはちょっと弱い。このあたり、不倫ドラマ好きな方にご意見をうかがいたいところだ。
いまはけっこうな観光地となっているビクトリアピーク(異論もあるようだ)でふたりが語り合うシーンは確かに美しい。悲恋の描写があまりに達者だし、主題曲のLove Is a Many Splendored Thingが哀切なので、はたしてこの映画は
『恋愛でシュガーコーティングした、しかし実は反共や西洋と東洋の文化摩擦を核にした政治的映画』
なのか
『その政治性をじょうずにまとった恋愛映画』
なのか判断に迷うところ。当時の観客からはどう受け止められたのだろう。
「香港は小さな街だ」
「わたしは小さくいたくないわ」
と奥深い会話があったり
「あなたは鏡が真実を映すと思っているのね。それは幻よ。左は右、右は左なの」
と共産主義者に向けて鋭い発言があったり、なかなか一筋縄ではいかない。
エリオットは戦争特派員として38度線に向かう(これも実は西と東の激突する場所だ)。
「特派員で死んだ人は?」
「東京で友人がバスにひかれた」
しかし彼は朝鮮戦争で……
タイトルは「愛とは多くの光り輝くもの」という意味。分別ある(すくなくともそう見える)男女が、無分別に恋愛に走る展開はやはり胸を打つ。戦地から送られたラブレターが泣かせる。
「僕たちは失ってはいない。光り輝くものを」