太宰の未完の新聞小説「グッドバイ」をベースにしている……という情報だけで読むのをためらってしまった。二年ぐらい。
別に太宰嫌いというわけでもないけれど、きついコンセプトのもとに書かれた伊坂作品ってどうよ……あああ失敗した。もんのすごく面白かったのである。
平凡な青年が、ある理由のために“バスに連れ去られる”ことになる。そのため、同時進行でつきあっていた五人の女性と別れなければならなくなる。まず、この設定がたいしたもの。
ここまで感情移入しにくい主人公もめずらしいが、伊坂幸太郎のことなので、こいつが何ともいいヤツに思えてくる。
彼の先導役は180センチの身長に180キロの体重を誇る繭美。どう考えてもマツコ・デラックスをモデルにしているんだけど、刊行当時マツコはメジャーになっていたかしら。
暴力的で加虐的なヒロインが、なぜか愛しく思えてくる展開は「モダンタイムス」と同様。“別れなければならない女性たち”を、なぜかほんの少し幸せにふたりがしてしまうストーリーはとてもやさしい。
太宰というよりも、「舞踏会の手帖」現代版といった趣きか。もっと早く読めばよかったー。ドカベンへの言及は爆笑必至です。
バイバイ、ブラックバード 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2010-06-30 |