「お父さん、ディーヴァーの新作が007なんだけど、これは“買い”かな」
「すぐ買え!で、オレにまわせ」
東京に住む息子との会話はこんなことでしか。息子にたかるなよ
ディーヴァーが007を書く経緯がよくわからない……と思ったら池田真紀子さんのあとがきで解説してありました。イアン・フレミングの財団がディーヴァーに依頼したのだと。フレミング亡きあと、たくさんの“新作”が書かれてきたけれど、ここで大御所に賭けたというところか。
オリジナルのキャラであるMやマネーペニーたちを、ディーヴァーらしいタッチで描いてあるのがうれしいし笑える。ただ、わたしは現在の、ダニエル・クレイグが演じるボンドが大好きなので、はっきりと彼の風貌を思い浮かべながら読んでいました。
悪役は産廃業者。彼の性的嗜好が特異だし、アシスタントとなる人物と彼が……おっとっと。ディーヴァーのことだから読者をひっかける手口はいつもどおり。例によってこの人物が真犯人ですよと思わせて……。
リンカーン・ライムのように肢体不自由ではなく、キャサリン・ダンスのように女性で家族持ちではないボンドのことなので、その危機はかなり暴力的。とにかく常に危機一髪。あ、007だから危機一発か。スーパーヒーローはたいへんですね。
描写も例によってやけに細かい。なにしろ、さほど重要ではない登場人物(あ、ちょっとネタバレ)の
「父親は、いまから何十年も前、カニングタウンの伝説的なパブに出演したポリスやジェフ・ベック、デペッシュ・モードを見たと言っていた」
なかなかこうは書けないよなあ。書く必要性も実はないんですけどね(笑)。これだからディーヴァーはやめられない。
007 白紙委任状 価格:¥ 2,499(税込) 発売日:2011-10-13 |