事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

明細書を見ろ!2013年10月児童手当号~トリクルダウン。

2013-10-09 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Elysiummoviereview11024x640 2013年6月児童手当号「年に一度のおつとめを」はこちら

とてもとても小さいテーブルがあります。家族全員が飲むミルクのコップを置くこともできません。

そこで賢い人は考えました。テーブルの上にわずかなコップをおき、そのコップにじゃぶじゃぶミルクを注ごう。そうすれば、コップのミルクを飲むことができる幸運な人もいるし、できない人もコップからあふれ、テーブルからしたたり落ちるミルクをすすることができるじゃないか。ミルクは人数分いらないし、なにより大きいテーブルを用意しなくてもいい!

あまりにあざといたとえ話ですが(笑)、これが経済学でいうトリクルダウン(こぼれおちる)理論とよばれるものです。

「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透する」

という、政府は小さければ小さいほどよしとする人たちに多い考え方。

この理論の信奉者は例外なく子ども手当をばらまきだと批判してきましたし、児童手当拡充よりも法人税減税を優先しています。企業がもうからなければ雇用も賃上げもありえないと。

ただこの理論の弱点は、今回あなたが受領した0,000円のお金が企業に回っていたとして、それ以上の果実を自分に用意してくれるとみんなが信じていなければならないことです。はて。はてはて。

※今号はちょっと社会派っぽく迫ってみました。画像は「エリジウム」
前作「第9地区」で、アパルトヘイトを“宇宙人VS地球人”の争いにシンボライズしてみせたニール・ブロムカンプが、今回は格差社会を“汚れた地球VS理想の宇宙コロニー”という図式で描いております。巨額の製作費を使って階級闘争を正面からとりあげるとは根性あります。主演はマット・デイモン(ハーバード中退)とジョディ・フォスター(イェール大卒)の超高学歴コンビ

2014年2月児童手当号~「おフランスの事情」につづく

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「特捜部Q カルテ番号64」 ユッシ・エーズラ・オールスン著 ポケミス

2013-10-08 | ミステリ

41rkwrcxbl_sl500_aa300_ 1作目と2作目の特集はこちら

第三作の特集はこちら

過去の未解決事件をあつかうコペンハーゲン警察特捜部Qシリーズ第四作。

それが北欧の特徴なのか、事件はあいかわらずひたすら残虐。対して特捜部の連中が(それぞれ心に傷を負っているとはいえ)ほんわかとユーモラス。この対比は健在。それどころかこれまででもっとも憎むべき事件になっている。

そのにっくき事件とは、劣性遺伝子の抹殺のために、有色人種や知的に劣った女性に強制的に不妊手術を行うレイシストたちの暗躍。彼らによって子どもを産む夢を絶たれた女性が復讐のために……この女性の方もたいしたもので、自分の人生を暗転させた人間たちを、一日のうちに少しずつ時間をずらして呼び寄せ……って30分ごとに三銃士と決闘の約束をしたダルタニアンですかっ!

人口500万人のデンマークにおいて、ある特定の時期に行方不明者が異常に多いことに気づいた特捜部のアサドとローセ。その事実にチーフのカールは、インフルエンザ、関係のこわれた妻、新しい恋人への思慕、そして特捜部にうつる原因となった事件の新事実に悩まされながら真相をあばいていく。

正直にいえば、途中で放り出したくなるほど暗い事件。デンマークにおいて、1960年代初めまで、“劣った”女性たちを収容する島が現実にあったという衝撃。作者のオールスンは、そんな事実と、ファシズムがふたたび台頭し始めている現代をこの作品でみごとに描いている。

妙味は、優性学信奉者の産科医であるじいさん。その根性が最悪なのに、死にゆく妻を溺愛していて、かつ身体が弱い設定。そのせいでますます憎々しい(笑)。得難いキャラです。

シリーズは全10作書かれる予定とか。なにしろヨーロッパではバカ売れだそうなので(第一作「檻の中の女」は映画化決定)、新作を楽しみに待つことにしよう。いやそれにしても日本人にはもうちょっと薄味の事件でかまわないんですが。

第5作の特集はこちら

特捜部Q ―カルテ番号64― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 特捜部Q ―カルテ番号64― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2013-05-10

 

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「アメリカ通り」あるいはドキュメンタリー映画祭のこと。

2013-10-07 | 映画

A_01american_alley_04 いきなりだけど、山形といえばどんなイメージ?さくらんぼ、花笠、最上川、蔵王、おしん(笑)……でもワールドワイドでいえば、もっとも有名なのは文句なくドキュメンタリー映画祭だ。

地元にいるとわかりづらいかもしれない。でもほんとなんですよ。映画人だけじゃなく、わかっている人はみんなこの時期に山形詣でだ。ある意味、東京国際映画祭よりもメジャー。ここまでに育て上げ、営々と補助金を出し続けた山形市はえらいっ!ほんとにえらいっ!

……と、上から目線で語りながら、実は参加したことないですわたし。

「だって10月に山形に行く用事ってないんだよな」

山形国際ドキュメンタリー映画祭のプレイベントとして(と同時に庄内ドキュメンタリー映画友の会上映会として)「アメリカ通り」の鶴岡まちキネでの上映にたずさわっている同級生に話すと

「なに言ってるんだ。用事はね、つくるものなんだよ」

「はー。お前は地方公務員の鑑だよ」

American Alley「アメリカ通り」は、ソウル北方の東豆川(トンドゥチョン)市にある。市の面積のおよそ40%を米軍基地が占めていて、歓楽街が基地村としてタイトルのような呼ばれ方をしている。韓国人にとって、あまりふれられたくない部分。

かつては多くの韓国人女性が働いていたが、現在はロシアやフィリピンからの出稼ぎが増えている。経済。

この街をあるものは結婚して出て行き、あるものは逃げ出し(そして再び引きずりこまれ)、あるものはここで死んで行く。娼婦の、典型

監督の視線はとてもあたたかいが、娼婦たちのその後を告げる字幕(→事実)はとても冷厳だ。その事実がいいとか悪いとかの以前に、娼婦の日常がありのまま画面に投げ出されていてすばらしい。真の意味でのドキュメンタリーたりえている。

40年以上この街に住み、ひっそりと死んで行ったKとよばれる韓国人女性が、実は日本語が話せるという事実からも、日本人観客のひとりとして考えさせられる。

「すごいな。いつもこのレベルの作品を上映してるのか」

「次も来いよ」

「うん。」

次回上映は10月17日(木)19:00 鶴岡まちなかキネマで「ブアさんのござ」ぜひ。

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八重の桜~第四十話「妻のはったり」

2013-10-06 | テレビ番組

Konoyurikoimg01_2 第三十九話「私たちの子ども」はこちら

前回の視聴率は13.3%と予想よりもちょっと低め。もっと上昇すると思ったのにな。

広告代理店的発想からいえば、視聴率はグロスで考えられることが多いので、半沢直樹とあまちゃんという巨大台風の去ったあとなので他のドラマにもっと流れるかと……そんなわけはないですか。むしろ視聴習慣を失った層はテレビから離れるのかな。

さて、今回は新島襄の過去が両親の来訪によってうっすらと描かれる。藩の祐筆になることが約束された将来を捨て、函館からアメリカに旅立った無謀な息子。両親を演じているのは清水紘治と香野百合子の俳優座コンビ。清水は異相もあって怪優扱いされることも多いけれど、津嘉山正種につづいてクロスオーバーイレブンのナレーションが素敵だったし、香野も悲劇的な役がとても似合っていたので美人はいつまでも美人だとうれしいです。

徳富蘇峰の旅立ちが基本線。残念ながら脚本も演出もスカスカだったし、八重も何もしていないけれど、自責の杖のエピソードのなかで語られた新島の発言には考えさせられた。

「学校は、生徒のものです」

教えを上からたれることが当然のことだという日本の教育にあって、私学の発祥がこのようなコンセプトだったことはもっと思い起こされていい。体罰が自分に向かっていた教師がいたことはもっと歴史に刻まれているべきだとつくづく。

山本覚馬は府議会議長の座につく。立候補制でなかった原始的な政治制度にもまた見るべきものはあったかも(高額納税者でなければ投票権がなかったことじゃなくて)。出たい人より出したい人を、ですよね。目が見えない覚馬が議長席につくときに、さりげなく時栄用の補助席がさしだされるシーンはうまい。「クイーン」において、侍従がエリザベス女王に椅子を用意するあの演出が参考になったのかな。

半沢もあまちゃんもいなくなった今、その欠落は大河に向かうだろうか。今回の視聴率は14%ジャストと読みました。

第四十一話「覚馬の娘」につづく

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明細書を見ろ!財形貯蓄特集号「財形貯蓄はおいしいか2013」

2013-10-05 | 明細書を見ろ!(事務だより)

Despicableme2 2012年の財形特集はこちら

さて、年に一度の財形貯蓄募集の季節がやってまいりました。今年度の募集期間は、裏面要項にあるように10月11日(金)から25日(金)までの二週間です。これはガチガチに決められていて、銀行マンがそれ以前に募集したりすると……

「チラシ配らせてくださーい」

先日やってきた某銀行員。

「うん、いいよ。今日のはなに?」

「キャンペーンと、あとは財形ですね」

「ふーん………………あれ?○○くん、フライングじゃないか?」

「あっ、そうですね!あぶないあぶない。怒られちゃうとこでした」

ということで、誰からかは知らないけれど怒られちゃうぐらい厳しいのです。他にも

・自宅への訪問

・ダイレクトメール

・電話による勧誘

・加入意志のない職員への過度の勧誘

・職員が迷惑と感じる方法による募集

・物品やサービスの提供

などが禁止されています。どうしてわざわざこんなことが決められているかといえば、制度導入時に、以上のほとんどすべてが行われたからです。夜討ち朝駆けの自宅訪問、乱れ飛ぶ懐かしのオレンジカード……それくらい、この制度は(特に金融機関にとって)おいしいということがおわかりいただけるかと。
急な出費がある(息子が稼ぎすぎて扶養手当を返納しなければならなくなった)某事務職員にとっても助かる存在ですが(泣)。

※中年の学校職員が、新人戦の振替休日に映画館にいく暴挙。中学生だらけの館内で、しかしやはり面白かった「怪盗グルーのミニオン危機一発」(一髪じゃないのはわざとですよ)。わたしは謎の生物ミニオンの魅力に抗しきれない。

2014年バージョンにつづく

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「償いの報酬」 ローレンス・ブロック著 二見文庫

2013-10-02 | ミステリ

51vyvnk16yl_sl500_aa300_ まだ終わってなかったんだマット・スカダーのシリーズ!うれしい。すっかり渋い老境の男となったスカダーが、「八百万の死にざま」のころを思い出して……いくらでも書けるんじゃんこの手を使ったら(笑)

“神よ願わくば、自分で変えていけるものを変える勇気と、変えられないものを受け入れる落ち着きと、そのふたつを見きわめる知恵を与えたまえ”

アル中治療の前段にあるフレーズだというが、スカダーの禁酒がまだ危うかったころのお話。疎遠になっていた幼なじみが、やはりアル中として現れる。彼は断酒において『埋め合わせ』と呼ばれる段階にいて、かつて行った悪行を(相手がそれで喜ぶかはともかく)埋め合わせているところだった。そんな彼が殺される……

スカダーがほぼ全編で行うのは「この人間は犯人ではない」ことの確認。だから快刀乱麻の名推理を期待すると肩すかしをくう。でも、地方選挙にからんだ妙に明晰な男など、やけに魅力的な人物が登場して飽きさせない。

特に「死者との誓い」で泣かせた元恋人ジャン・キーンとのからみは、若いころから読んでいたからこそ味わい深い。スカダーと同じく74才になったローレンス・ブロックだけれど、多作が身上の人なのだから、もっともっとこのシリーズを続けてほしい。悪友ミック・バルー(肉屋にして実はギャング)との会話だけでも読む価値はある。また6年も待つのはつらいなあ。

償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション) 償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
価格:¥ 980(税込)
発売日:2012-09-21
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古畑任三郎を全部観る特別篇~生ドラマ「古畑 vs SMAPから14年」 脚本、演出:三谷幸喜

2013-10-01 | テレビ番組

Img_275965_2511587_2 まあ、これをドラマと称していいかは微妙(笑)だけれど、古畑任三郎の世界が展開されるのは「古畑中学生」以来だから5年ぶり。前回の「古畑任三郎 vs SMAP」からカウントすると14年ぶりということになる。こうなりゃ意地だからちゃんと観ましたとも。わたしのブログの1/3のアクセスは古畑ネタのようだし

古畑も、SMAPも、今もなお支持され続けていることだけでも素晴らしいとしておこう。ネタははっきりと「大脱走」。スコップでコンコンと叩いて合図するとか、トンネルで逡巡するメンバーが出るとか、きちんと踏襲されています。もっとも、元ネタがトンネルを出た瞬間からいきなり緊迫するのに比べ、こちらでは元マネージャー役の戸田恵子がのんきに現れるのがご愛敬。なにしろ5人が脱走してやりたいことが、古畑家をピンポンダッシュだってんだからあのガキどもは成長してません。

生ドラマという側面が強調されていて、草なぎが実際にセリフが飛んでしまったあたりでその緊張感は伝わる。むかしはナマが通常だったことを知らない世代には(わたしだってリアルタイムで見ていたわけではありませんよ)、新鮮だったことと思う。

まあ、お好きな方には「ER」が(あのセリフの量なのに!)たまに生をやっていたのでおなじみかも。香取慎吾は「HR」でその緊張感を味わっていたはずだ。わたしの世代では久世光彦が「ムー」などでやってくれていたのがうれしかったなあ。軽演劇出身の伊東四朗が本領発揮とばかりにはりきるはりきる。

そんな仕掛けを、フジテレビ(と関西テレビ)開局55周年のイベントでやれるのだから舞台演出家としての三谷は大喜びだったろう。田村正和の不在は仕方ないとして、唯一気がかりだったのは、戸田恵子の指輪。古畑よ、妻の候補ならあふれるほどの美しい犯人たちがいたじゃないか!(笑)

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