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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「石を放つとき」ローレンス・ブロック著 二見書房

2021-04-24 | ミステリ

ローレンス・ブロックの、マット・スカダーものの新作が出てたなんて。まあ、純粋な新作長編というわけではなくて、中編の新作プラス短編傑作選といった体裁。ハヤカワから出ている短編集とのダブりもあり、単行本未収録だったものもある。とにかく読めてうれしい。

訳者解説によれば、ブロックはシリーズの途中からスカダーと自分の年齢をシンクロさせることにしたのだとか。ってことはもう80才。で、そんなおじいちゃんがあんなことやこんなことをやるのである。

それが不自然に感じられないのは、この長大なシリーズが、一度どん底に落ちた人間の回復の物語だからだろう。

もう数十年にわたってスカダーに付き合ってきたわたしにとって、ニューヨークとはスカダーがいる街だ。どうか少しでも長くこのシリーズをブロックには書き続けてほしい。ニューヨークの物語を紡いでほしい。"

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「三船敏郎、この10本」高田雅彦著 白桃書房

2021-04-23 | 芸能ネタ

三船敏郎は黒澤明監督作品だけじゃない!ということで、コメディやロマンスものなどを紹介してくれる好著。

それだけではなく、ミフネの特質をていねいに解き明かしてくれる書でもあった。たとえば、あの「用心棒」「椿三十郎」を見ると、彼の殺陣は他の人と違い、身体の各部位の動きが極端に同時進行で、だから動きの速さ以前の問題として“彼の殺陣は短い”のだという。だからリメイクのために同じ脚本を使ったとしても、どうしても上映時間は長くなるというわけだ。

上映時間云々は別の要素もあるだろうが、ミフネが同太貫を振るときの凄みは、そんなところにも起因していたろうか。

この本でもっと興味深かったのは、“ミフネが出演しなかった、あるいはできなかった作品”が列挙されていることだろうか。オファーがあっても、さまざまな理由でキャンセルせざるをえなかった作品群。これが、豪華なのだ。

まず、東宝がコロンビア(現SONY)と組んで「酒吞童子」を製作しようとした。ミフネは源頼光の役。異人だったという説もある酒吞童子にはウィリアム・ホールデンという企画。

欧米人にとって未知の存在である東洋を舞台に、「羅生門」で知名度もある三船敏郎を起用して……わからないでもない。実現したら興味深い作品になったことと思う。しかしギャランティの問題などで流れている。

「ウィリアム・アダムス」篇につづく

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「用心棒」(1961 東宝)

2021-04-22 | 邦画

これはもう、誰も文句が言えない歴史的名作。

黒澤明監督、三船敏郎主演、脇に仲代達矢山田五十鈴司葉子、東野英治郎、志村喬、藤原釜足、山茶花究。まだ無名時代の加藤武、ジェリー藤尾、西村晃、天本英世、夏木陽介……ものすごいメンツ。加えて音楽が佐藤勝で撮影が宮川一夫。鉄壁の布陣。

分かれ道で、路傍の枝を放り投げ、向いた先に進む素浪人。肩をゆさゆさ揺らしながら歩く三船敏郎を見ているだけでうれしくなる。

彼がたどり着いた宿場は、やくざのふたつの勢力が激突し、地獄のような(人間の手首をくわえた犬で象徴)様相を呈していた。

マルタの鷹」のときにお伝えしたように、ダシール・ハメットの「血の収穫」が元ネタになっている。凄腕のクールな男が、双方を戦わせることで共倒れをもくろむ。

考えてみれば、これはよほど陰惨な話で、三船敏郎の明るいキャラがなかったら印象として苦いものが残っただろう。とにかく人が死ぬ死ぬ。

もちろん、それまでのチャンバラだと斬りあいは一種の舞踏なので、いくら人が切られても観客はなんとも感じないのだけれども、クロサワは斬りあいにリアリズムを持ちこみ、肉を断つ効果音まで挿入したものだから、現代の客もたじろぐほどだ。わたし、たじろぎました。

なによりハードボイルドなのは、主人公が暴力によって徹底的に痛めつけられる(そして復活する)ことで、王道のミステリの匂いがする。時代劇なのに英米製の肌ざわりがあるのはそのせいだろうか。そして三船敏郎の凄みは……これ、つづきます。

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明細書を見ろ!2021年4月号 配当予算発表

2021-04-21 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2021年3月号「特殊勤務手当その3」はこちら

大幅にメンバーチェンジしましたので一応の説明はしておきます。この高飛車なタイトルの黄色い紙は本校の事務部報です。基本的に給料袋に毎回入れておきますのでご愛読を。

今年度もコロナがらみや「先生になりたくない2021」「紙上初任者研修」などを特集します。乞うご期待。

さて、義務教育費説明会が行われ、教育委員会から今年度の配当予算が発表されました。裏面に載せましたのでじっくり読み込んでください。マイナスシーリングを絵に描いたようです。

さてその席で、教育委員会は出納からさんざん文句を言われていると明かしました。学校ってちょっと変じゃないかと。その代表的なものは

「なぜこんなに伝票が多いんだ」

つまり、もっとまとめて購入した方がスマートだし、事務方の負担も少ないのでは?と。このあたりで、市長部局と小中学校の文化、といえば大げさですが、事務のやり方の違いが如実に。

本来、きちんと起案して決裁を受けて発注するのですから、ちまちま買っている場合ではない……よく、理解できます。ただ、それだと学校というところはうまく回らないのも確か。学校事務職員は考え込んでいます。

画像は「ノマドランド」NOMADLAND 主演フランシス・マクドーマンド

まもなく発表されるアカデミー賞大本命。というかぜひともとってほしい。スタインベックの時代と違い、現代の(高齢の)放浪者たちはキャンピングカーで移動を続ける。それはなぜか。感動。(まだ危なくなる前に)東根で観てよかった。傑作です

5月号「PayPayの町アゲイン」につづく

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「食っちゃ寝て書いて」小野寺史宣著 角川書店

2021-04-19 | 本と雑誌

作家専業で生きている中年男。彼は編集者の言う通りに書き直した作品がボツを食らい、途方に暮れる。

書くことだけで食べていくことがどれだけ大変か。この、本が売れない世の中ではなおさら。

主人公と小野寺が二重写しになるように描いてあり、最後にはみごとな仕掛けも。

どんどん生活をシンプルにする主人公には、もう生きているのかすら聞こえてこない山本昌代(大傑作「緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道」の作者)が投影されているのかなとすら。

小野寺史宣は本屋大賞候補の常連になったことでもあり、食べるに困ることはもうないのでしょうが。

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青天を衝け 第十回 栄一、志士になる

2021-04-18 | 大河ドラマ

第九回「栄一と桜田門外の変」はこちら

先週は桜田門外の変という大事件をあつかったこともあり、渋沢家のホームドラマの方はほとんど進展しないままだった。

しかしよく考えると今回の公武合体の和宮の降嫁にしても千代の妊娠にしても、これらの展開はすべてホームドラマだとも言える。そのスケールが違うだけで。長七郎(満島真之介)が安藤対馬守の暗殺から脱ける修羅の道を選ぶのも、兄の説得によるものだったし。

和宮が京から江戸に向かう道として、なぜ東海道ではなくて中山道が選ばれたのかは想像がつく。川止めがないことは当然だろうけれども、浅田次郎の「一路」で描かれたように、人工的なほぼまっすぐな道(だから主人公の名前が一路だった)なので、不測の事態のリスクが小さかったんでしょう。時代小説は読んでおくものだと思いました。だったら有吉佐和子「和宮様御留」も読んどけって話ですけどそっちは(笑)。

さて栄一。百姓は鋤や鍬でもふりまわしてろと揶揄されるけれど、鋤や鍬こそが革命の本分であることが水戸の浪士たちはまだわかっていない。その意味では、故郷に帰っていらつきながらも畑を耕す栄一はまだ足が地についている。もっとも、心中穏やかではないわけで……革命前夜です

若いものたちの血のたぎりに「困ったものだ」と思いつつも、何も言わない父親とて、幕府の理不尽さは誰よりも感じている。そのあたりを小林薫はしみじみと。

あれ?この徳川家茂役はどっかで見たことがあるぞ。おっとまたしても「ひよっこ」の磯村勇斗じゃないですか。プロデューサーも「ひよっこ」の人だ。

磯村にしても要潤にしても、日本の芸能界は仮面ライダー(と乃木坂やAKB)がどんどん席巻しています。悪くない話です。この大河はジャニーズが強くない年なので(これからだって出てこないんじゃない?)、必然なのかな、とも。まあ、草彅剛を起用した段階であの事務所にケンカ売ってるようなものか。

第十一回「横濱焼き討ち計画」につづく

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うまい店ピンポイント 2021年春休みは遠くなりました とみ将

2021-04-17 | 食・レシピ

雲ノ糸篇はこちら

痛風の激痛が第一の印象になってしまった2021年の春休み。医者に行って血液検査の結果を聞く。

「おかしいなあ。尿酸値そんなに高くないんだよねえ」

ま、そういうこともあるだろさ。

さて、有休をとって医者に来たのだから、ラーメンでもいただきましょうかね……なぜか医者からははるかに遠い八幡のとみ将へ。

いつどんなときでもここは来てますもの。

チャーシュー麺。おいしい。次に来るのはいつだろう。そのときはどんな病気で……違ーう!

龍上海鶴岡店篇につづく

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「流人道中記(上・下)」浅田次郎著 中央公論新社

2021-04-17 | 本と雑誌

時は幕末。高位の旗本が、姦通の罪で捕らえられる。当時はおよそ成立することすら珍しい罪だったが、切腹を命ぜられた彼はそれを拒む。

「痛ぇからいやだ」

武士にとって温情ある措置である切腹を拒否した彼を公儀はもてあまし、最北の松前藩に預けることとする。およそ一カ月におよぶ道中で彼を押送するのは、低い身分から旗本に婿入りした若者。彼は罪人として旗本を軽蔑しつつも、次第に影響を受けていく。

浅田次郎が描く、屈託をかかえた若者の成長物語とくれば、どうしたって思い出されるのが「一路」。あれは傑作だったなあ。

そしてこの「流人道中記」はてらいなくあの作品をトレースしている。浅田がそれを自らに許したのは、なぜ旗本は罪を認めたのかという大技を最後に持ってきたからだ。この、アクロバティックなラストを成立させたのは、浅田の驚異的な小説テクニックだろう。こんなきわどいお話を、天下の読売新聞に長いこと連載した作家としての自信もすごい。

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勝手に人生相談Vol.50 痛風

2021-04-16 | 健康・病気

青い夏 伊勢正三&山本潤子

Vol.49「教員採用試験」はこちら

40代女性。右のかかとが痛くなり、近くの総合病院の整形外科を受診して通風と診断されました。痛みは1、2週間で治まると言われたものの、実際には2か月以上かかりました。薬は当初から飲んでおらず、食生活に気を付けていますが、再発が心配です。(埼玉県・M)

人生相談というより、健康相談だな。同じ病気を発症したばかりなので気合いを入れて読む。

びっくりした。

いや女性が通風を発症したことにではない。男性の方が圧倒的に多いとはいえ、女性だって数は少ないながらも通風患者がいることは承知していたので。

わたしが驚いたのは、この人は薬も飲まないで2か月も我慢したってこと。

少なくとも痛み止めぐらいは処方されたんじゃないのかなあ。もしもそうでもなかったら、どんだけ痛みに強いんだ。

よく、女性の方が痛みには耐性があるとか言います。出産の痛みに男性は耐えられないだろうとか。だから公平を期すために男性には通風を与えたのでは?なんてことまで考えたりした。いやしかし我慢強い人だなあ。わたしなんか通常の痛み止めに加えてステロイドまで処方されてようやく痛みから抜け出したのに。

回答者の蔵城雅文大阪市立大講師は、通風についてこう総括している。

・痛む前段階の「予兆期」を経て、強い痛みが24~48時間続く「極期」に入る

・その後、痛みが弱まる「軽快期」が1~2週間あり、発作が治まる

・痛みが強いときに活動すると尿酸の結晶がさらにはがれるので安静が必要

・発作があるときに薬で尿酸値を下げると、尿酸の結晶が溶けようとしてはがれ落ちる

・食事はカロリーを抑え、動物性たんぱく質、ビールも極力控える

・激しい運動は逆効果。ウォーキングや水泳などの有酸素運動が効果的

……しまったあ。わたしは結晶を押し流すためにいっしょうけんめい運動を(痛いのに)やってたけど、あれってよくないことだったんだなあ。

にしても、やっぱり予兆ってあるよね。あ、来そうだ、ってわかるもの。それにしたって「極期」ってネーミングはあの痛みにぴったりすぎる。

本日の1曲は山本潤子と伊勢正三のデュエットという、わたしの世代にはたまらん「青い夏」

Vol.51「黙とう」につづく

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「蜘蛛の巣を払う女」The Girl in the Spider's Web(2018 SONY)

2021-04-15 | 洋画

故スティーグ・ラーソンが著した「ミレニアム」三部作は全世界でとんでもないベストセラーになった。

当然のように母国スウェーデンで映画化され、こちらも大ヒット。天才ハッカーにして身体にドラゴンのタトゥーを入れているリスベットに、骨太でちょっとおばさんが入ってる(失礼)ノオミ・ラパスを起用したのが懸念されたけれども、むしろ彼女の気合いの入った演技は高く評価されたのだった。

この企画をハリウッドが見逃すはずもなく、映画化権を手に入れたSONYは、監督デヴィッド・フィンチャー、主演ダニエル・クレイグを用意し、そしてリスベットにはそれまでおしとやかなお嬢さんのイメージが強かったルーニー・マーラを抜擢。

わたしはこの作品を楽しく見た。一種の本格ミステリの匂いをふりまいてスタートし、叙情的なラストでうまくまとめている。あまりにハリウッド的ではないかという批判もあったようだが。

ある程度の興行成績をハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」はあげたにもかかわらず、なぜか続篇は作られず、時は流れた。

印象として、いきなりな感じで新作登場。しかもスティーグ・ラーソンのオリジナルを書き継いだダヴィド・ラーゲルクランツ版第1作「蜘蛛の巣を払う女」がチョイスされている。なんで?まあオトナの事情というやつなんでしょう。蜘蛛の巣とはもちろんWEBのこと。

監督は「ドント・ブリーズ」で注目されたフェデ・アルバレス。この人の才能は疑いない。空撮を多用してリズムを生み出している。

実はラーゲルクランツ版でいちばんきついエピソード(双子の姉妹の激突)なので陰惨になりがちなのをリズムが救っているのだ。それでもこの作品の評価は低く、ヒットもしなかったようだ。しばらく続篇の話は出ないだろう。その要因として、わたしは主演のクレア・フォイの幼児体型にあったのではないかと勝手に思っております(笑)。

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