ソコダラ科の魚は極めて種類が多い。今回のこのヤリヒゲは、ソコダラの仲間では普通種である。ほかのソコダラの仲間は水深200mより深い場所に生息しているが、このヤリヒゲは水深100m台の深さからも採集されている。またソコダラの仲間は基本的に太平洋岸に生息しているのだが、このヤリヒゲは日本海側でも採集されている。
ヤリヒゲはトウジン属の魚である。そのほかのトウジン属の魚とは、体側の斑紋が明瞭であること、吻の背部に広い無鱗域をもつこと、頭部下面は先端にのみ鱗があること、鱗にある小棘は弱い、などの特徴をもつ。イチモンジヒゲやトンガリヒゲとは、体側の斑紋が明瞭でないことなどで区別できるが、意外と難しいものである。
ソコダラ科魚類の同定は難しく、いつも不明なソコダラの仲間を見るたびに悩むものである。ソコダラ科の魚を同定するためのポイントは、頭部背面の鱗の有無、体側の鱗の棘の様子、肛門付近の腹面、頭部背面の鱗の配置、頭部背面の鱗の棘の配置などを見る必要がある。素人同定は個体そのものがないと、写真だけでは無理なのである。どなたか、「日本のソコダラ」なんていう書籍を作ってほしい。