スズメダイの仲間はサンゴ礁でごくふつうに見られる小魚ですが、本州から九州にかけての海域に多く生息し、琉球列島ではあまり見ることができない種もいます。このマツバスズメダイもそんな魚のひとつ。基本的には本州~九州の沿岸で、太平洋岸・日本海岸いずれにも見られますが、沖縄では決して多くはありません。
この仲間は磯や防波堤でごく普通に、様々な種類が釣れるもので、私もよくこの科の魚を釣っていたものですが、マツバスズメダイと初めてであったのは2009年の秋のことでした。釣り仲間がマツバスズメダイを釣ったのをいただいたのです。最初は慣れ親しんでいたスズメダイのちょっと色が薄いものかと思いましたが、すぐにマツバスズメダイと同定できました。それほど、いつも見ているスズメダイと違う、とわかったのでした。
特に尾鰭にある黒い線がスズメダイのものよりも明らかに強烈でした。しかし、あまり同定にこの特徴は使われないようです。
書籍や水中写真を見る限り、マツバスズメダイとスズメダイはともによく似ていて間違えられやすいといえます。ただ全体的に見れば、マツバスズメダイは体色がスズメダイよりも明るく、尾鰭の黒い線がスズメダイのそれよりもはっきりしているように見えますが、それは同定のポイントにはならないのでしょうか。
マツバスズメダイは水深70m以浅の岩礁域、スズメダイは水深15m以浅に多いようですが、スズメダイもやや深い場所で釣れていてイサキ釣りの際に釣れることがあるなど、生息場所もこの2種は重なっていることがあるようです。
食についてはなんともいいにくいものです。なぜならマツバスズメダイを食したことがないから。近縁種であるスズメダイは塩焼きなどで美味しいもので、九州北部では人気の食用魚です。もしかしたら気が付かないうちに食べているのかもしれません。漁法としては釣り、定置網のほか底曳網の漁獲物としても見られます。やっぱり、やや深い場所に生息する魚のようです。