久しぶりに北海道の魚を。スズキ目・クサウオ科・コンニャクウオ属のオグロコンニャクウオ。
オグロコンニャクウオはその名の通りで、背鰭、尾鰭、臀鰭が黒いのが特徴。体は紫というよりは汚い桃色。「汚い」というとコンニャクウオ属には「ヨゴレコンニャクウオ」というのもおり、混同しないように注意が必要。ヨゴレコンニャクウオは本種とは吸盤の形状や胸鰭の形が違っている。分布域は青森県の太平洋岸~北海道の太平洋およびオホーツク海、海外ではアリューシャン列島付近にまで生息している。
今回の個体は神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能 宏博士に同定をお願いいたしまして、オグロコンニャクウオとのこと。ただし今回の個体についてはちょっと疑問点もあった。検索図鑑によればオグロコンニャクウオは両顎歯がすべて犬歯状または棒状のクラスタに含まれているが、この個体は歯の先端が3葉に分かれている感じ。雌雄の差などもあるのかもしれない。もっともクサウオの仲間は研究の途上にあり、今後新種や再記載されるべき種なども出てくると思われるが。いずれにせよX線でなければ鰭条数が測定できないなど、同定が極めて難しいということも研究が難航している理由であろう。
上顎の歯はちょっと見にくいが3尖頭
下顎の歯は3尖頭のものとへら状のものがある
生息水深は意外と幅広く(低水温をこのむ海水魚ではよくあるパターン、ただし高緯度地域限定)、100~1000mをこえる深さにまで見られるようである。今回のものはおそらくキチジ漁で漁獲されたものをいただいた。坂口太一さんと瀬能 宏博士に感謝です。ありがとうございます。