長崎産の素晴らしい魚を入手しました。スズキ目・ホタルジャコ科・バケムツ属のバケムツ。
バケムツはホタルジャコ科の魚の中でもアカムツ属のアカムツによく似ている。アカムツと違うところは体色が黒っぽいところ。またアカムツの体の鱗は櫛鱗であるのに対しバケムツは円鱗であるところが異なる。またアカムツは多くが第1・第2背鰭が少しつながるようだが、バケムツはこれらの鱗が離れている。
ホタルジャコ科のには臀鰭棘数が2のものと、3のものがいるが、バケムツは後者である。日本産ホタルジャコ科魚類は14種がいるが、その中で臀鰭が2棘しかないのはスミクイウオ属(5種)のうちの4種だけである。
下顎先端には棘のようなものがない。この特徴からオオメハタ属の魚と区別することができる。歯がかなり鋭く、上顎の歯は牙のような感じ。下顎の歯は牙というよりは鋸歯のようである。バケムツはムツ科の魚によく似ているが、以下の点がことなる。日本産のムツ科魚類は背鰭軟条数と臀鰭軟条数がバケムツよりも少し多く、側線有孔鱗数は幅があるものの、概ねムツ科の魚のほうが多いなど。また顔の形もムツの仲間とは違う印象を受ける。
分布は広く、伊豆諸島や長崎、鹿児島県、沖縄諸島に見られる。海外では台湾やサモア、フィジーに生息している。水深500mまでの深い海に生息し、大陸棚斜面や島嶼、海山の周辺に生息するようである。バケムツ属は現状で1属2種が知られており。もう1種Neoscombrops cynodonはインド洋西部に生息している。
Heemstra(1986)では、Neoscombrops annectensと、N. cynodonの2種を記録しているあ、前者は後者のシノニムとされている。前者は1922年に記載されたのだが、後者は1921年に記載されている。ただこの属の魚は分類学的な再検討が行われている途中のようだ。
ホタルジャコ科の魚はほとんどの魚が重要な食用魚。小さなホタルジャコも「じゃこ天」の原料として重要であり、ワキヤハタやスミクイウオのような中型の種は練り製品の原料となるほか、焼き物や刺身で食べても美味しい。アカムツは刺身、寿司、煮つけなど様々な料理で食され、ありがたがられる。バケムツもアカムツほどではない(そもそも、あまり漁獲されない)が食用魚である。肉は薄いピンク色でやわらかいが、脂が多くて美味しい。今回はすべて刺身にしたが、煮物にしても美味しかったにちがいない。ただ刺身の写真があまりにも適当すぎて残念。
長崎県 印束商店 石田拓治さんより。ありがとうございました。
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