もう12月も終わり。来週で今年もお終いです。今日は昨年我が家に来ていたが紹介できなかった魚。フグ目・フグ科・モヨウフグ属のカスミフグ。
カスミフグの尾鰭
カスミフグはモヨウフグの仲間で、全長30cmをこえるというが、ふつうはもっと小さいだろう。全身に特に目立つ縞模様や白い斑点はないので、ほかのモヨウフグ属の多くの種とはそれにより識別できる。色自体はグレーで地味なのだが、そこがいい。この写真からは全くわからないのだが、口元や眼は黄色くてそれなりにきれいである。尾鰭の色彩は地色が黄色っぽいが縁辺が黒いという色彩になる。これについては上記の写真でも確認できるだろう。また鰓孔の周りが妙に黒っぽいものも特徴である。
カスミフグの体表の小棘
カスミフグの体表には小棘がたくさん見られる。東南アジアなどの釣りウェブログではこのカスミフグを釣りあげた様子の写真が掲載されており、それはハリセンボンのごとく棘を立てていることが多い。なんか手触りがよさそうである。モヨウフグ属の種ではそのほとんどの種でこのような小さな棘を見ることができるようだ(ケショウフグなど見たこともない種もいるが、それはどうだっただろうか)。以前入手したモヨウフグも、小棘の1本1本が大きく、まるでハリセンボン科のように見えた。ただこの棘の有無は属レベルの階級の定義にならないらしく、トラフグ属やサバフグ属では種によって棘があったり、なかったりである。たとえばシロサバフグやクロサバフグ、ドクサバフグでは背面の小棘が明瞭だが、カナフグでは見られなかった。これについては今年の3月に記事にしたので見てほしい。
スジモヨウフグ
さて、モヨウフグ属といえば避けては通れぬ(?)交雑のお話。椎名さんの手元に戻ってきたHPエリートデスクを使ってGoogle先生を召喚し、カスミフグで画像検索を行うと、一部どうしても怪しいものが見られる。見た目はカスミフグなのだが、背中に薄い縦線が入っているというものである。これは何を意味しているのかだが、スジモヨウフグと交雑したものなのか、それともカスミフグにもこのような模様が現れることがあるのかということで定かではない。より詳しく調べてみたいところではある。ちなみにスジモヨウフグの分布域は西-中央太平洋 (ハワイ諸島を含む)に限られ、インド洋は極東部から採集されているのみ、カスミフグはインドー西太平洋(紅海を含む)に見られるもので若干の違いがある。国内においてはカスミフグ・スジモヨウフグともに「日本産魚類検索第三版」では琉球列島しか記されてはいないが、スジモヨウフグは和歌山県から採集されているし、カスミフグも本州~九州から(証拠標本の有無はともかく)得られている。ちなみにこの個体は宮崎県で採集された成魚の個体である。基本的には沿岸の浅場に生息するが、カスミフグなどは汽水域からもよく採集されるようである。筆者も汽水域でモヨウフグ属の幼魚(ワモンフグ、サザナミフグ、スジモヨウフグ)をよく採集したものである。またいつか採集して飼育したいものである。
ちなみに本種は有毒とされるが毒性の詳細については不明。釣れても食用とはせず、飼育してかわいがるか、逃がしてあげたい。この個体は宮崎県のWadaさんから標本用に譲り受けた魚である。いつもありがとうございます。
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