魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

アオスミヤキ

2023年07月24日 22時35分58秒 | 魚紹介

最近は殺人的な忙しさでした。したがってぶろぐの更新はだいぶ減ってしまっていたり、遅れてしまっている。申し訳ない。

この間久々にすごく心躍る魚が我が家にやってきた。クロシビカマス科・アオスミヤキ属のアオスミヤキという魚である。この種は10年ほど前、2012年に我が家にやってきそうだったのだが、その時は入手することができなかった。ようやく今回、対面ということになった。なお名前の「スミヤキ」は炭焼きで、クロシビカマスの別名でもあるが、宮崎で「すみやき」といえばシマイサキのことも指すので注意が必要である。

アオスミヤキがほかの日本産クロシビカマス科魚類と大きく異なるのが腹鰭の存在と、側線の形状である。アオスミヤキ(やトウヨウカマス属)は腹鰭が大きいが、カゴカマスやクロシビカマスなどは腹鰭を欠くか、極端に小さい。

アオスミヤキの側線分岐

トウヨウカマスの側線分岐

アオスミヤキはトウヨウカマス属に似るが、側線の形が異なる。トウヨウカマス属の側線は鰓蓋付近を通るが、アオスミヤキのそれは胸鰭の上方で分岐することで見分けられる。ほかのトウヨウカマス属魚類(トウヨウカマス、エラブスミヤキ、タチカマス)も同様の特徴を有する。トウヨウカマスについてはかつてこのぶろぐでも記事にしてきた。そのため覚えている読者の方も多いと思われる(残念ながらこのぶろぐは「継続して見に来てくれている方」というのは少ない。 自分の研究についてもほとんどネタにしていないし)。

トウヨウカマス属は上記のように3種が三大洋から知られるのに対し、アオスミヤキ属は1属1種とされ、その学名はEpinnula magistralis Poey, 1854とされた。キューバのPoeyということで、やはり西大西洋産のものがタイプ標本である。日本においても長らくこの学名が使用されてきた(もっとも、日本ではまれな種ではあるが)。その後2017年にHo博士らが太平洋産(西太平洋とハワイ諸島産)のものをEpinnula pacifica Ho, Motomura, Hata and Jiang, 2017として新種記載。しかしこの学名はEpinnula orientalis pacifica (Gray, 1953)の新参ホモニム(この学名は現在トウヨウカマスにあてられている)として新たにEpinnula rex Ho, Motomura, Hata and Chiang, 2022という学名になった。「なんとかrex」という学名は「Tyrannosaurus rex」でお馴染みであるが、「~の王」を意味する(アオスミヤキのほうもたぶんこれが由来だと思うが、Zootaxaはフリーではないのだ)。いずれにせよ「暴君竜の王」よろしく、深海の強力な捕食者であったろう。写真はT.rexとのツーショット。暴君竜の王とアオスミヤキ属の王のツーショットが、6500万年の時を超えて実現した。

さて、そんなアオスミヤキを食する。「クロタチカマス科の魚は美味しいけど、骨がねぇ...」とお嘆きのそこの奥様に朗報である。アオスミヤキはどうやら、クロタチカマス科としては小骨が少ないらしいのである。実際に以前食したトウヨウカマスも同様に骨が少なくて食べやすいものであった。これがカゴカマスやクロシビカマスとなれば、もはや骨との戦いとなる。これはまだ食していないエラブスミヤキにも期待が持てそうである。味についても脂がよくのり非常に美味しかった。分布域は三重県尾鷲、土佐湾、口永良部島、トカラ列島、琉球列島。~台湾、ニュージーランド、ハワイ諸島。

今回の個体は長崎の石田拓治さんより送っていただいたもの。いつもありがとうございます。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« キタテハ | トップ | オイランヤドカリ近縁種 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

魚紹介」カテゴリの最新記事