魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

オニベラ

2023年11月06日 23時44分56秒 | 魚介類飼育(海水)

明日の仕事が急遽お休みになったので、夜遅くですがぶろぐを更新。

先日採集してきたこのベラ。カミナリベラ属の一種で「アカオビベラ」ではないかとおもわれたのだが、採集して水槽にいれると腹部に黒い小さな斑点が見えた。これは同じカミナリベラ属のオニベラという種のほうの特徴である。オニベラはインドー西太平洋に生息し、日本でも伊豆半島以南から報告されている。高知で初採集となるオニベラに心躍る。アカオビベラであれば2016年以来の採集なのだが、オニベラはもっとブランクがあるのだ。

石垣島のオニベラ雌

前回オニベラは2008年に沖縄県石垣島のタイドプールで成魚の雌と思われるものを採集している。このときもどうやら最初はアカオビベラと誤同定していたらしい。そしてイチモンスズメダイと一緒に網の中に入って来たことを今でも鮮明に覚えている。今思えばその場所は熱帯性海水魚の幼・稚魚がたくさん見られる夢のようなポイントであった。残念ながら生かして持ち帰ることはできなかったが今年ついに元気なまま生かして持ち帰ることができた。

オニベラの雄

オニベラは雄は派手、雌や幼魚は地味だが繊細な模様が美しいので、観賞魚としての飼育に向きそうである。しかし雑誌「マリンアクアリスト」においてはなぜかベラ特集でもこのオニベラ…ではなくカミナリベラ属の情報が皆無なのである。カミナリベラ属の仲間はあまり輸入はないものの色彩が美しくしかもリーフセーフな魚なので観賞魚としての人気がありそうなのだが、本属の入荷は極めてまれで、カミナリベラがわずかに近海便で入って来る程度。

オニベラとコガシラベラ

なぜカミナリベラ属の入荷が少ないのかといえば、この属の魚が比較的デリケートであることもその理由の一つではないかと考えている。多くのアクアリストが好むのはヤッコやクマノミといった種であるが、そのような魚は性格がきついものが多い。カミナリベラ属の魚は大変デリケートであるため、成魚でありよほど大きな水槽でない限りそのような魚との混泳は避けたほうが無難。このカミナリベラがトップの座にたてるような水槽で、水槽の混泳相手も温和な小型ハゼなどとが望ましいだろう。また同じくらいのサイズのベラ科魚類を混泳させるのもよい。海ではこのオニベラの子はコガシラベラやオトメベラ、カミナリベラなどと群れをつくっていた。そのため水槽でもこれらの魚と一緒にしてあげるとよいだろう(もちろんオニベラと同じくらいのサイズ)。なお本種は夜間や危険が迫ったときなどは砂の中にもぐる習性がある。そのため水槽内には細かいパウダー状の砂を敷く必要がある。薄すぎても潜れないのでだめだが、逆に厚く敷くのもよくない。我が家では3cmくらい敷いている。餌はコペポーダはまだ厳しいのでキョーリンのクリーンワムシを爆食しているので、とりあえずはこれでよいだろう。

オニベラの幼魚

ベラの仲間は毎年幼魚が色々獲れて楽しい。今年はベラ類は大して多くはなかったのだが、昨年はブチススキベラ、掬うことができなかったがオビテンスモドキなどがいた。ただし毎年来るベラの種は異なり、例えば今年はモンツキベラやトカラベラなどは姿を見せることはなかった。オニベラは2021年は姿を見せたが、昨年はいなかったと思う。やはりこの種も(死滅こそしないが)季節来遊魚なのだろうか。ただしKuiterのベラ本には平田氏撮影による高知県産の成魚の雌雄の写真が掲載されている。繁殖している可能性もあるのかもしれない。

カミナリベラ(2007年採集)

カミナリベラ属は世界では11種類が分布するとされる。うち日本産は5種。高知県では本種とカミナリベラを採集したことがあるが、ほかの種はまだ見たことがない。同じ属のカミナリベラは本州~九州の太平洋岸、および日本海西部の磯で夏から秋にかけ幼魚が採集できる。雄の成魚は美しい色彩をしているのだが、やはり性格はデリケートで幼魚を採集しても大きく育てることが難しいベラである。

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