魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

イッテンフエダイ

2017年05月05日 11時02分20秒 | 魚紹介

昨日のミナミフエダイに続き、フエダイ類の特集パート2。スズキ目・フエダイ科・フエダイ属のイッテンフエダイ。

イッテンフエダイの特徴は成魚の背鰭・臀鰭・腹鰭・尾鰭・そして胸鰭が黄色みをおびること、側線の上に黒色斑があること。この黒色斑は大きくなると小さく不明瞭になってしまうことも多い。逆に掌くらいの大きさのイッテンフエダイだと、各鰭の黄色がちゃんと出ておらず、褐色になっていることが多い。

今回のイッテンフエダイは前回ご紹介したミナミフエダイと一緒にいただいたもの。成魚はサンゴ礁域に生息し、幼魚は内湾の浅瀬でそのかわいい姿を拝むことができるのだが、私はまだ汽水域で本種を発見したことはない。

分布域は広く、東アフリカからマルケサス諸島に至るインドー太平洋域の熱帯域に広く分布し、紅海やオマーン湾にもいるよう。日本では千葉県以南に分布しているが、本州から九州では幼魚が多い。イッテンフエダイは東南アジアでは食用となっているが、沖縄ではシガテラ毒をもつとして市場にはあまり上がらない。食性は動物食性でサンゴ礁に生息する小魚や甲殻類などを好んで捕食する。

イッテンフエダイはクロホシフエダイによく似ている。よくクロホシフエダイの尾鰭は赤みを帯びた褐色、イッテンフエダイは鮮やかな黄色といわれているが、大きいものやかなり小型のものはあやしいものもいる。特にクロホシフエダイの大きな個体は特徴的な黒色斑が小さくなっていくのでわかりにくいことがある。こういう場合は口腔内を見るとよい。クロホシフエダイの鋤骨歯帯の中央部は後方に突出するが、イッテンフエダイの鋤骨歯帯中央部は後方に突出していない。同定方法の詳細は夏にクロホシフエダイやイッテンフエダイが採集出来たらこのぶろぐでも解説することにしたい。

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ミナミフエダイ

2017年05月04日 23時50分39秒 | 魚紹介

もう5月も4日目です。早いものです。つい何日か前までは寒くて暖房を焚いていたように思うのですが。

写真の魚はスズキ目・フエダイ科・フエダイ属のミナミフエダイ。実は日本ではまれなフエダイなのだ。

ミナミフエダイは体側に大きな黒い円形斑があること、体側の背部から腹方にかけてオレンジ色の縦線が複数本あるのが特徴。これによりニセクロホシフエダイに似ているが体側の背部、側線上にある大きな黒色斑の形が、楕円形に近いのが多いような感じがするニセクロホシフエダイのものよりも明らかに大きくて丸いのだ。

ニセクロホシフエダイ

体側背部の模様が円形に近い個体。これもニセクロホシフエダイだ。

もちろんニセクロホシフエダイにも円形のものがいる。そのためニセクロホシフエダイとはほかの方法で同定する必要がある。ミナミフエダイの側線より上の鱗は側線とほぼ平行に走るのに対し、ニセクロホシフエダイの側線より上の鱗は斜め上後方に向かうのが特徴だ。しかしちゃんとピントが合う写真を写していないと、これらの特徴はわかりにくい。このような鱗の特徴は死後にわかりやすくなるように思う。ニセクロホシフエダイの写真を撮影したが光が強く当たっていたり、ぼけぼけーだったりして、特徴がわかりにくかったのだ。オキフエダイやイッテンフエダイなどの種も同じような鱗のとくちゅを有するのでご参考に。

 

ミナミフエダイとイッテンフエダイの鱗。本当はニセクロホシフエダイの鱗の様子がわかる写真があればよかったのだが。

ミナミフエダイは日本では八重山諸島(石垣島・西表島)にのみ生息するといわれている。宮崎にもいるという話をどこかで聞いたことがあるような気がするのだが、詳細はよくわからない。海外における分布は紅海・東アフリカ~マリアナ諸島までのインドー西太平洋域である。生態はニセクロホシフエダイとよく似ていて、小型個体はマングローブ域にいるのだが、大きくなるとサンゴ礁域に見られるようになる。写真の個体もたしか西表島の河川かマングローブ域かで2009年に採集されたものを2匹もいただいた。海外では食用になっているようだが、日本ではまれにしか獲れないので、食用にされるかはわからない。

なお、古い図鑑ではミナミフエダイとLutjanus johnii、通称ジョンズスナッパーがごっちゃになっていることがあるので要注意である。たしかに両種とも大きな円形斑が体側の背部にあるのが特徴であるため混同されていたのかもしれない。Lutjanus johniiのほうは体側の鱗に大きな黒色点があるように見える。なお、Lutjanus johniiも近年宮崎県南部で採集され、カドガワフエダイという標準和名がついている。

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テングハギ

2017年05月01日 23時52分19秒 | 魚紹介

2013年の11月に採集して以来、冷凍庫で眠っていた魚。スズキ目・ニザダイ亜目・ニザダイ科のテングハギ。

テングハギといえば、成魚は頭部にある大きな「角」が特徴的な魚である。しかしある程度大きくならないと「角」は生えてこない。それのない若魚は独特の体形であるため、同定は困難ではないが、写真のような稚魚の同定は写真からだけでは難しい。

日本産テングハギ属は15種がいるが、その中でも背鰭棘数は重要な同定のポイントになる。多くは5~6棘であるが、ボウズハギのように4棘のものがいたり、ミヤコテングハギのように7棘のものがいたりする。さらに背鰭棘の長さも同定のポイントになるようだ。本種の場合、背鰭の第1棘の長さが同定のポイントになるという。この子の同定には再び加藤昌一さんにおせわになった。ありがとうございました。背鰭第1棘が明らかに長いとお話すると、テングハギという答えが返ってきた。魚類検索図鑑の画像を見ているとテングハギの背鰭はそれほど長くなく、むしろヒメテングハギの背鰭が長いが、幼魚だと異なるのかもしれな。いずれにせよ、水中写真だけでなく標本も見ないと、このユニコーンの子供たちは同定が難しいのかもしれない。

今回の個体は三重県で採集された。ただし前回のボウズハギと異なり、今回は三重県尾鷲の漁港に水揚げされたものである。水揚げされたものが氷水で冷やされ、プラスチック水槽のなかに様々な魚が入れられている中から頑張って探したのであった。

このテングハギと思われる幼魚、別の個体を飼育していたことがあった。今から10年ほど前に高知県で採集した幼魚。大きさとしては今回の子と同じくらいの大きさだ。最初は尾柄の帯の様子からヒメテングハギではないかと思われたが、これもテングハギということであった。テングハギも尾柄にこのような帯が出ることがあるのだという。

背鰭の鰭条も若干長くのびている。この仲間は独特な仔魚期を経て成長するが、これもその名残であろうか。残念ながらこの個体は秋には死んでしまった。小さいうちは臆病なのかもしれない。水槽内にはシマハギやサザナミヤッコのほか、ソラスズメダイやミツボシキュウセンなどを飼育していたがその影響かもしれない。

成魚は全長70cmにもなる。尾鰭上下が糸状に伸び格好いいが、飼育には巨大な水槽が必要になる。家庭の水槽で飼育するのにはあまり向いていないかもしれない。この仲間で家庭での飼育に向いている、といえるのはミヤコテングハギなど少数であるがそれでも150cmくらいの大型水槽が欲しいところである。

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