フィギュアスケートのグランプリファイナルが始まった。6人の出場者のうち、男子は2人、女子は3人が日本人。なんだかトリノ五輪代表争いがすごいことになってるようで、いつの間に日本はこんなに強くなったんだ?という感じだ。どんなスポーツでも、選手層が厚くなるというのはいいことだから、みんなに頑張ってほしい。
私が子供の頃のフィギュアスケート競技は、規定・ショートプログラム・フリーの3本立てだった。規定は、氷の上に指定された図形(円とか半円とか三角とか?)をスケートのエッジで描く。ショートプログラムは今とだいたい同じで、決められた要素を織り込んで滑る。(ただし、指定されたジャンプの回転数は時代によって違っていたはず。女子が三回転を跳び始めたのは、そんなに昔のことじゃない。)点数のなかで規定の占める割合が高く、SPやフリーの演技がたいしたことないのに、いつも余裕で優勝する人とかもいた。
規定はかなり前になくなったが、つい昨年か一昨年まで、採点方法は各審判がそこまで滑った選手の中で何番目と思うかをつける「順位点」方式だった。これだと、無名の若手はかなりいい演技をしてもいい点がもらえない。滑る順番が先だと、後から滑る予定の有力選手がいい演技をしたときのためにいい点を“温存”されてしまうので、これまた損する。自分の出身国の選手に明らかに贔屓する審判もいたし、観客に与えた印象と出てくる点数・順位に大きなずれが出ることがしばしばあった。すごく盛り上がって、ジャンプも決まって、なのになんでこの点数?みたいな。表彰式で名前を呼ばれてもすぐに台に上がらないことで抗議の意思を示した、ボナリーというフランスの女子選手がいたが、この人は最後のオリンピックでバック転をしてみせた。バック転は禁止されていたので当然減点されたが覚悟の上で、やはりスケート界への抗議の表明だったらしい。
しかし、採点方法が変わって、見ていてもかなり面白くなった。ジャンプ以外にも、スピンの難度やスピード、ステップの細かさ速さ、スパイラルの美しさが一つ一つ評価される。つなぎの滑りなんていうのも採点項目にある。技の難度と演技の正確さで点数を出せばいいので、滑走順が前だろうと、今年シニアに上がったばかりの新人だろうと、見たままの点数がつく。最終順位はSPとフリーの順位点(1.0が一番上なので低いほど上)の合計ではなく、演技の点数の合計だから、SPの順位が上位でなくても、点差しだいでは逆転も可能。最後の一人の演技まで楽しめるようになったといえる。
トリノ五輪代表については、15歳の浅田真央選手が出場資格がないことが話題(?!)になってるようだ。「オリンピック以外の大会には出場資格があるのに、オリンピックだけ違うのはおかしい」「現在優勝を狙える実力があるのに、最高の選手が集まる舞台であるはずのオリンピックに出ないのは問題」等。今回のグランプリファイナルでもし優勝するようなことがあったら、特別措置として出場を認められるのではないか?という憶測までとびだしている。しかし、日本女子3人の枠が4人に増えるのでなかったら、他の選手たちが黙っちゃいないだろう。枠が突然減るのと同じことだからだ。昨年の成績と今年の成績をポイント換算して多い人が出るという条件で競っているのに、条件外にいた人がいきなり出ることになって納得する選手はいないと思う。それに、もし同じ条件・同じプレッシャーを受けながらこれまでの大会を戦っていたら、浅田真央がこれほど伸び伸びとした演技で高得点を出せたかどうか? 「自分は関係ない」と思っているから、余計なことを考えずに実力を発揮できているのでは?と思わないでもない。
とはいえ、浅田真央の演技は見ていて楽しい。まだ子供子供した顔と体つきであどけないが、手先・指先の表情が柔らかく、音楽に合わせて細かいところで振り付けに可愛らしい工夫を凝らしていて、それが今の彼女にぴったり合っている。大人っぽい表現も取り入れてはいるが、いかにも少女らしい“健全な”感じ。大人の男(ロリコンを除く)が見てもsexyとは思わないが、同年代の少年たちは見惚れるかな、というところだ。技術も高度なのだが、あんまり完璧にも見えない。長野五輪で優勝したタラ・リピンスキーも15歳だったが(数ヶ月の差で出場資格があった)、ちょっと機械みたいに見えなくもなかった。そこへいくと浅田真央は、何をやっても15歳らしくて、その“らしさ”が好ましいのだ。
思い返すと、いろいろな“アイドル”がいた。ブロンドのおかっぱが風になびくのがきれいで、転んでも可愛い笑顔で一躍アイドルになったのはジャネット・リン。“3回転を跳ばない最後のチャンピオン”と呼ばれたドロシー・ハミル。「ビールマンスピン」に名前を残したデニス・ビールマン。技術と表現力とルックスと3拍子そろって、「カルメン」が絶品だったカタリーナ・ビット。アメリカからはクリスティ・ヤマグチだのミッシェル・クワンだの、なぜかアジア系が多い。伊藤みどりのトリプルアクセルも初めて見たときはすごいと思った(この人のジャンプは高く上がってから回転し始めるところが特にすごかった)。
一人演技が終わるごとに投げ入れられる花やプレゼントを拾い集める係の子供たち(今日は男の子もいた)が可愛くて好き