いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

中産階級の没落 ニューエコノミー

2005年09月17日 21時19分36秒 | その他
■今回の選挙結果を見ても、日本社会はやはり激しく変わりつつあることがわかる。それ以上にどう変わっていくのを見通すと暗澹たるイメージしか浮かばない。

::以下、メモ/ノート ::

■日本社会と対比して米国社会を調べてみようと思い、既読・積読の本から、佐々木毅『現代アメリカの自画像-行きづまる中産階級社会-』、エイミー・チュア『富の独裁者』、山室義正『米国の再生-そのグランドストラテジー-』をbrowsingした。『現代アメリカの自画像-行きづまる中産階級社会-』は1995年の出版であり、1997年の日本の拓銀破綻、山一證券破綻などの破綻明確化の直前であり、今では信じられないことではあるが、1980年代後半の日本バブルと米国の衰退という状況を受けて,1990年代前半の米国の自己再生、特に1992年の大統領選、クリントン政権誕生の前後を、政治思想、政策を軸に米国の現状分析を佐々木が行ったものである。この時、1980年代後半の米国の危機が端的に中産階級の没落という社会現象であらわれていた。つまりは、がんばっても親以上には豊かになれない米国中産階級という現象である。おいらは1995年頃この本を読んだとき、米国ってやっぱ斜陽だよなと思い、まさか日本が中産階級没落の渦中に飲み込まれるとはつゆも思わなかった。

■この、佐々木毅『現代アメリカの自画像』は1995年の出版で、その後の話は書かれていない。今回おいらが、米国事情をちょっとしらべようと思ったキーパーソンが、ライシュである。ライシュはクリントン政権で労働長官をした。その前に『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージ 』を著し、政策提言をした。提言したのは’積極的経済ナショナリズム’である。その後、R.ライシュはクリントン政権終了後(?)『勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来』を著し、90年代の米国経済を総括している(らしい)。ので、今日、『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージ 』、『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ―21世紀資本主義のイメージ 』をアマゾン・中古で注文した。

■山室義正『米国の再生-そのグランドストラテジー-』では、第3章、クリントン政権の財政経済戦略と米国経済の再生、においてライシュの政策が解説してある。すなわち、政府が高付加価値産業の創出を促進し、他国との競争に打ち勝つことが米国に繁栄をもたらす、との主張・政策。そもそも、この本『米国の再生-そのグランドストラテジー-』は、「クリントン政権下の経済繁栄は、カーター政権での「強いアメリカ」再生を目指す政策構想が、グローバル経済という環境下で空前の経済繁栄として結果した。そのメカニズムを分析したもの」と著者、山室は書いている。

■米国の空前の経済繁栄として結果の一面として、米国内の富の偏在、中産階級の没落、貧困層の増大、さらにその貧困層のキリスト教原理主義化などがある。『勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来』の内容は;

消費者市場主義時代の幕開けで、労働者にとって過酷な社会になりつつある。米国社会を分析し、勝者であり続けるために何を犠牲にすべきかという問題を解き明かす。

だそうだ。

●さて、その没落した米国中産階級がなぜ、まがりなりにも、安定しているか?というメカニズムについて、エイミー・チュア『富の独裁者』では、アメリカン・ドリームという特異なもののメカニズムを指摘して;

 アメリカでは、「中の下」以下の階級に資本主義の熱心な支持者が目立つ。こうした階級のなかには、億万長者に好意的で、福祉への依存を嫌う人が驚くほど多い。このような人々は共和党を支持し、税率の引き上げに反対する。政府の干渉や所得再分配制度には大反対だ。
 なぜこのような傾向がみられるのだろうか。その理由のひとつが、アメリカン・ドリームである。アメリカではかなり多くの人が、「有能で、勤勉で、起業家精神に富み、それほど不運でない人なら、どんな階級の出身者でも豊かになれる」と考えている。