いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

誤差(エラー)の顛末

2009年11月05日 19時20分08秒 | その他
  

■最近知ったこと。モンパルナス駅機関車暴走事故。

以前から表紙のインパクトが気にかかっていた本。『計測における誤差解析入門』。誤差⇒⇒⇒この結果、というのもすごいなぁ、と思っていた。この表紙は原著から来ていると確認(画像右)。何の根拠もないのだけれども、この事故は英国なんだろうな、と思い込んでいた。

そんな今年夏、たまたま読んだ『フランス』(渡辺 守章ら、1983、岩波書店)に、壁から飛び出した蒸気機関車の写真が掲載されていた(本記事最下部の画像)。これを見ておいらがこういう事故がこのころヨーロッパでは続出していたんだろうなと思ったが、よく見ると『計測における誤差解析入門』の表紙写真と同じ事故らしい。読むと、1895年のモンパルナス駅の事故と知る。なぜこのモンパルナス駅事故の画像がこの本にあるかというと、フランスにおけるサン=シモン主義についての次の解説に呼応しているのだ;

サン=シモン主義の影響は奇妙なところまで拡がりだしていて、何よりもそれを象徴するのが蒸気機関車です。 力が強くて、たくさんの群衆をのせ、石炭さえあれば止まることなく、どこかへ向かって邁進して行く。この蒸気機関車のイメージが、未来像を形づくってゆく上でかなり大きなものだった。文学作品の中にも繰り返しあらわれてきます。(蓮實 重彦)

サン=シモン主義やコントの生産至上主義、それも科学技術を適用した生産至上主義の象徴に蒸気機関車がなっていたという指摘だ。この科学技術を適用した生産至上主義をハイエクは「科学による反革命」と批判した。

ところで、蒸気機関車はともかく、現代の金融工学こそ数学や電算機を体系的に援用したハイエクのいうところの「科学による反革命 -理性の濫用」なんでないべか。今回の2008年の国際金融崩壊こそ暴走機関車の転落にほかならない。error analysisしろよって感じ。

ハイエク系"保守"派からのネオリベ批判、金融グローバリズム批判って今あるのかな?

▼最後に、error analysisの表紙に暴走機関車を用いるのは一種のしゃれである。つまりerror=過失、手違いの意にかけてある。誤差はerrorという語の多彩な意味の一部である。なので日本語の誤差論の本に事故の写真が載るとぎょっとする。ちなみにこのモンパルナス事故、死者1名。福知山線脱線事故は死者107名である。





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