いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

太陽の下に新しきことなし; 原子炉、ダイヤモンド、そしてGE。 天然と人工の間で...

2011年05月22日 14時56分25秒 | その他
原子炉、ダイヤモンド、GEという三題でヨタ話。

最後に、最近の話題の、東京電力福島第1原発事故で1号機への海水注入が一時中断したのは政府の指示を受けた措置か?の問題。
地震直後の注水を、臨界を危惧して、躊躇したことはありうるだろうという話を。

■技術によって作られた有用物は、天然にあるものと天然にないものに分けられる(視点1)。

あるいは、別の視点から、天然に既にあるものを目指して作られたものと人間が概念的に設計し技術により具現化したものに分けられる(視点2)。ダイヤモンドが前者で、原子炉が後者である。原子炉より高級そうな核融合は、むしろ、前者ある。

今となっては、視点1からみて、"原子炉"は天然に既にあったことが分かってきている。ただし、人間、というか毛唐さんという人種が核連鎖反応を具現化する動機には、この天然の"原子炉"の存在は貢献していない。なぜなら、人間さまの原子炉の実現時には、この天然"原子炉"は未発見だったからだ。

■原子炉と対照的なのが、ダイヤモンド。人間は有史以、ダイヤモンドを知っていた。最古はインドとされている。重宝していた。本格的に自ら作ろうとしたのは20世紀になってから。ダイヤモンドの生成は地球深くの高圧条件下で起きると気づき始め、高圧条件を実験室で実現することが決定的な因子であると分かったからだ。

■ブリッジマンの高圧物理学の成果に引き続き(これでノーベル賞を受けた)、ダイヤモンド合成技術を実現させたのが米国のGE(ゼネラル・エレクトリック wiki)。1955年3月に米国のゼネラルエレクトリック社(現ダイヤモンド・イノベーションズ社)が高温高圧合成により人類初のダイヤモンド合成に成功したことを発表したwiki)。

このダイヤモンドの合成への挑戦の間、挑戦者は天然のダイヤモンドを目にし、あるいは、手にし、合成に取り組んでいたはずだ。できるかできないかわからない、というものではなく、理想/目標が現にあるのだ。

■GE(ネラル・エレクトリック)。合成ダイヤモンドは、今となっては、二束三文の工業的価値しかなく、日本でさえも採算があわないらしい。最近のもっばらの生産国は中国らしい。1955年当時は、その成功が世界的ニュースになる技術の開発であったが、今では、ローテクでしかないからだ。

ところで、GEは、いつだって、その時代の最先端の技術開発に取り組んで商業化している。ただの商業化ではなく、大型で高度技術、そして大きな売り上げの「装置」がターゲットだ。今話題の原子炉は、当時は花形技術だったのだろうが、所詮、基本的には40年前の技術だ。最近はイージス艦とかを作っているらしい。

そのように時代、時代の最先端技術に取り組み続けるには、GEの組織経営は相当アクロバティックではないといけないだろう。事実、GEの人の雇い方は独特らしく、常に構成員をランクづけして、下位グルーブ10-20%は解雇し、その分を新規採用して人員を流動させているらしい。

こういう理由、すなわち、定常的に人をクビにするので、そのトップは、ジャック・ウエルチは「中性子ジャック」とあだなされているらしい(wiki)。

そして、原子炉。

■フェルミが中性子で放射性同位体元素を生成し(もちろんノーベル賞)、ジラードが核分裂連鎖反応を思いつき、原子炉を考えついた(もちろん、核爆弾の方を先に思いついた(wiki)。ジラードはアインシュタインを誘って、ローズベルト米国大統領に原爆開発を勧告した。一方、フェルミは、プルトニウム核爆弾を着想した(カトリック文明の聖地、ローマ生まれのフェルミは、こんなことには思いは及ばなかったのであろう⇒処女からヒバクかぁちゃんへの1945年。たいしたことないな、フェルミ推定)。

そして、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)は米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社が開発した発電用原子炉で、1960年7月に運転開始したDresden1号(20万kWe)が最初である出典)。

人間にとって、核分裂連鎖反応なぞ、自然界、特に地表ではなじみのないもの。まず科学的知見があって、応用系を頭脳で設計し、装置をつくって具現化したという、絵に描いたような科学→技術の例。

■でも、見つかった、天然の"原子炉"

天然の"原子炉"は、フランスの物理学者Francis Perrinが、アフリカのガボン共和国のオクラという場所で、1972年に発見した(wiki)。

詳細は上記wikipediaを見てもらうこととして、簡単な経緯は、ウラン鉱石を掘りにいったフランス人が、かつて連続核分裂反応をしたウラン鉱石を見つけたというもの。なぜ、かつて連続核分裂反応したことがわかったかというと、ウランの同位体比を測定した結果から。

この最初の結果が、さらなる分析、測定の研究のきっかけとなり、詳細がわかってきた。

天然のウラン鉱でも、1)ウラン濃度が高いこと、2) 20億年前は中性子を出して分裂しうるウラン235の濃度が高かったこと(現在の8倍)などの条件で、天然ウランの核分裂が生じた。

その研究手法は、元素の同位体分析とその結果の解釈に核分裂反応の系列を考慮することなど、そして、なぜ天然ウランが核分裂する環境条件が実現されたのかという観点を主軸とするものであった。すなわち、原子炉を作った人間さまの知見(メガネ)で、天然"原子炉"のメカニズムを解析したのだ。数十万年にわたって、平均で100 kW相当の出力の反応が起きていた、という結論だ。ちなみに、この天然"原子炉"は自然に"廃炉"となり、その場が"核燃料廃棄物質貯蔵地"になり、現在に至っている。

この例は、"このダイヤモンドの合成への挑戦の間、挑戦者は天然のダイヤモンドを目にし、あるいは、手にし、合成に取り組んでいたはずだ。できるかできないかわからない、というものではなく、理想/目標が現にあ"ったのだ、と逆の例である。つまり、人間が考えついたもの、つくったものから、自然の現象を知り、解釈した例。

もし、人間が原子炉を作る前、あるいは、核原子物理学が発生、発展する前に、山師さん(鉱山屋さん)がこの鉱山を見ても、何も「見えなかった」であろう。もっとも、こういう物言いもウソなのであって、原爆時代より前においては、山師さん(鉱山屋さん)はウランに興味なぞない。自然を科学的に見るには、メガネが必要なのだ。そして、ある種特定の"色メガネ"で、自然を見ることが「科学」なのだ。

■減速材、水

天然ウランの核分裂は上記2条件だけでは不十分らしい。減速材が必要。中性子が次の核分裂をよぶには、その中性子が減速される必要がある。このオクラの天然"原子炉"では水がその減速材の役目を果たしたと、今では、考えられている。


●最後に、 「再臨界指摘していない」 班目委員長が反論 (#1)

「専門家としてそんな指摘をするわけがない。怒り心頭だ」と全面否定と班目委員長が反論しているらしい。

今となってはそうかもしれないが、再臨界の可能性を躊躇する可能性はあったのではないか?

「メルトダウン」問題。このカッコつきの「メルトダウン」、何が問題か?

問題は普通はペレットで小さく小分けされている酸化ウランも、炉心が一部溶融を伴い容器の底に崩壊した(「メルトダウン」)ことを考えると、ペレットの金属容器は溶けたであろうから、ペレット容器の「金属」部分はマグマのように溶け、溶けていない酸化ウランの「石」と固液分離(固体と液体が分離すること)、重力分離して、酸化ウランは塊として集積することがありうると想定できる。事故当初、制御棒が入ったから核分裂反応は止まった。だから、大丈夫という解説が流布した。でも、「メルトダウン」したのであれば、燃料棒システム全体が瓦解したのであるから、制御棒の形状維持制などわからない。もし形状がそのままでも、上記、ペレット容器とペレット酸化ウランが物理的に分別し、かつ制御棒のフレームから離脱すれば、酸化ウランは塊として集積することがありうると想定できる。 (思い浮かべるべき光景は、鉄鉱石の溶融。鉄鉱石の原料の中の不純物である"石"の部分は溶けず(あるいは溶けても)に密度の違う溶融した金属部分と重力分離する;スラグの分別。)

もし、ここに、減速材である水を注入すれば、再臨界を起こすかもしれないと危惧したのではないだろうか?(ここで重要なのは、水は冷却材であると同時に減速材であること)

だから、注水を躊躇したのではないか?というのが今回の件に対するおいらの邪推である。

ウラン濃度は100%。 ウラン235だって、そもそも天然より濃縮している。上記オクラ天然原子炉よりよほど厳しい条件なのでなないだろうか?

もっとも、ペレット容器の「金属」部分はマグマのように溶け、溶けていない酸化ウランの「石」と声き分離、重力分離して、酸化ウランは塊として集積する現実性の高さを検討しないといけない。そして、ホウ素もいつから入れたか?、すぐ入れたのか?というのも検証しないと。

たぶん、原子力の“げ”の字も知らない素人の邪推なのだろう。

■蛇足; 鍛造について;

現行ぬっぼんのえすたぶりっしゅめんと・エリートさま、がまぬけであることが、現行日本の最大の問題であることは、本愚ブログが再三指摘していることである⇒①小森常務は「うー」とうなり声を上げながら号泣。、②日本の先進諸外国に比べ著しい特徴はエリートがバカである、ということである

もちろんこれら愚記事は、えすたぶりっしゅめんとサマに対する、おいらの ねたみ・そねみ・ひがみ [Across a Death Valley with Distillated Resentment !] に基づく、ある種特定の強烈な"色メガネ"で見て取った、(看て、[死に水を] 取らむとする)、大偏見に他ならない。

熱すぎる心を持った、あの松岡"鍛造"、センセ、ではない(~ _")が、

ぬっぼんのえすたぶりっしゅめんと・エリートさまに、一番欠けているのが、鍛造である、

と、言いつのりたい。

鍛造一方、世界の原発の圧力容器で8割のシェアを占めるのは日本製鋼所だ。そこには日本刀を美術工芸品の粋にまで高め、戦艦大和の主砲の砲身の製造にも使われた鍛造技術が息づいている。海外メーカーの追随を許さず、原子力大国フランスから支援のため乗り込んできた原子炉メーカー、アレバ社ですら同社から圧力容器を調達している。 ⇒ 愚記事;日本刀を今更に

ぬっぼんのえすたぶりっしゅめんと・エリートさま、は皆、抜刀の心意気を忘れ、御殿女中のように生きているのだ;⇒東電社員「東電を非難するのは構わないが、自分たちが被害者だといった考えはやめろ」「贅沢な生活をしていることを今一度再認識しろ」

#1
「再臨界指摘していない」 班目委員長が反論

2011/5/22 16:45

 福島第1原発1号機で始めた海水注入が一時中断した問題で、注入によって再臨界の危険性があることを指摘したとされた原子力安全委員会の班目春樹委員長は22日、共同通信の取材に対し「専門家としてそんな指摘をするわけがない。怒り心頭だ」と全面否定した。

 一方、細野豪志首相補佐官は同日のフジテレビ番組で、班目氏が再臨界の危険性を指摘したと重ねて説明した。

 班目氏によると、東日本大震災翌日の3月12日午後6時から官邸であった海水注入の検討の場で、原子炉への影響について意見を求められた。中長期的には原子炉圧力容器に悪影響を与える可能性があると指摘したが「再臨界のことを聞かれた記憶はない」とした。

 政府・東京電力統合対策室は今月21日の記者会見で、海水注入による冷却に関し「原子力安全委員長から『再臨界の危険性がある』との意見が出された」との経緯を記した文書を発表した。

 班目氏は、文書は発表直前に初めて示されたとし、「事実関係が違うと抗議したが、そのまま発表されてしまった」と対策室の対応を批判。「専門家ならば誰もが、あの状況では冷却を最優先するべきだと判断するのは当然。(可能性がほとんどない再臨界の意見を出したとされたのは)原子力の“げ”の字も知らない素人だと侮辱されたようなもので、怒り心頭だ」と述べた。

 また、枝野幸男官房長官は22日、青森県三沢市で記者団に「東電がやっていることを(政府が)止めたことは一度も承知していない」と政府の指示を否定。「時期は正確ではないが、水をうかつに入れると再臨界の可能性があると検討されたのは記憶している」と述べた。〔共同〕










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