小西議員はトリックスターある。中世においては道化というのが、一定の役割を与えられていた。権威なるものをぶち壊すには、いたずら者がちょっかいを出すのが、もっとも効果的であった。
今回の小西議員の立ち回りは、まさしくトリックスター(道化)であった。まずは、おもむろに得体のしれない行政文書を出して、天下の副将軍水戸光圀の印籠のごとく、「控えろ」「控えろ」とお見えを切った。
これに即座に反応したのが朝日、毎日、共同、さらにはテレビ局であった。安倍側近が放送法の解釈変更を強行したという妄想に同調した。その証拠がこの行政文書だとばかり書き立てて、高市大臣が「捏造」と否定すると、反高市キャンペーンを繰り広げた。
マスコミの大応援団をバックにした小西議員は、これは勝てると思ったようだが、徐々に分が悪くなってきた。事務次官にも大臣にも回っていない代物で、行政文書のファイルにも収められていなかったからだ。味方のはずの総務省の担当者も、遠回しながら、否定的な見解を述べるようになってきた。
これでは自分の立場がなくなるので、小西議員は早々と勝利宣言をして、唯一高市大臣の首を取れなかったのを残念がってみせた。
勝手に勝ち誇った小西議員は、衆議院の憲法審査会が週一で行われているのを、何としても許せなかった。「素人が官僚の作文を読んでいる」だけなので、一泡吹かせようとした。何せ自分は「憲法学者」なのだから。
ついつい思い余って小西議員は、そこのメンバーを「サル」「蛮族」と馬鹿にした。その途端に雲行きが変わってきた。他党の議員ばかりではなく、マスコミまでもが苦言を呈するようになった。自分ほどの能力があるわけがないのに、自分を批判するというのは嫌がらせでしかない。そんな人間の言論など封殺して当然だと居直ったらば、四面楚歌になって総スカンされた。
マスコミからは「言論を弾圧しているのは小西さんではないですか」とマスコミから総攻撃された。そこまでされれば戦うしかない。法律に精通する小西議員は、放送法4条の遵守を持ち出し、偏向報道は認められないという方向に議論をすり替えた。安倍さんや高市さんすらできなかったことを、大胆にもやってのけたのだ。その場しのぎのトリックスターが、放送法の無意味さを国民の前に暴露したのだから、とんでもない大金星である。
もはや放送法などは廃止して、一切の規制はなくして電波オークションをすればいいのである。そこまでやるしかないということを、小西議員は私たちに教えてくれたのだ。
ことここにいたっては、小西議員は保守系の放送法遵守の会にでも加わって、テレビ局の偏向報道を批判すればいいのだ。わざわい転じて福となすである。当然のごとく、一方的な報道しかしないサンデーモーニングも話題にしなければならないだろう。
誰が敵か味方か分からないのが、トリックスターであり、その本領をいかんなく発揮したのが小西議員なのである。