今の日本の国会を見ていると、ある種の絶望感に打ちのめされる。安倍内閣を追い詰めるために、できるだけ審議に応じたくない野党と、妥協を重ねるだけの与党の駆け引きが、全てに優先されているからだ。これでは国民はたまったものではない。議会政治への失望感が広がれば、左右とも直接行動に訴えるようになるだろう▼カール・シュミットの『現代議会主義の精神史的状況』(樋口陽一訳)で論じたような事態が、令和の世の日本で起きているのである。シュミットはジョルジュ・ソレルの思想を紹介することで、議会主義が風前と灯となっていることを訴えたのである。ソレルは「偉大な熱狂をおしゃべりと陰謀のなかで弱めてしまい、精神的な決断の源泉である真の本能と直感を殺してしまう」として議会主義を排斥し、「闘争と戦闘に結びつく戦士的かつ英雄的な観念」こそが「緊張した生の真の衝動」として歴史を動かすという立場であった。それは無政府主義やサンディカリズムの主張であると共に、ファシズムを正当化することにもなったのである▼シュミットは議会主義に関する安易な楽観論を批判したのだ。シュミットはソレルらの反議会主義の思想を「神話の理論」と位置付けている。このままでは非合理的な力の台頭に手を貸すだけである。一日も早く国会を正常化させなければ、国民はそっちの方に向かわざるを得ないのである。それに気付かない与野党の国会議員は、あまりにも愚かである。
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