中川八洋の本を最近手にして、唯一彼だけが今の日本の危機を予言していたことを再確認した。中川が『中国の核戦争計画 ミサイル防衛、核武装、日本・台湾同盟』で主張していたことは、今すぐ我が国が取り組まなくてはならないことである。
中川は「脅威との共存」から「脅威の除去」へ、我が国が方針を転換することを説いている。いうまでもなく、その脅威は中国によるものである。中国の軍事的大膨張を阻止するには、その根源を絶つしかないのである。。
中川は、私たち日本人に向かって訴える。「チベットの侵略に目をつぶり、中共がこれからなすであろう台湾への侵略に耳をふさぐとすれば、日本とは義もなく勇気もない国ではないか。義や勇は美徳の基本だから、日本とは徳なき国家ではないか」と叱責したのだ。
中川が念頭に置いたのは「東アジア戦域限定核戦争」である。中国の戦争目的は、台湾の占領と日本の属国化である。あくまでも東アジアの戦争にしたいのだ。米中全面核戦争を望んではいない。
そこで中川は中国が軍事大国化する2005年ころまでに、米軍のパーシングⅡの各部隊を、台湾と日本に配備するとともに、米軍の地上発射型トマホークを、日本の山陰、九州、沖縄、山梨、山形へ展開することを提案した。前者は北京や軍事指揮中枢、後者は中国の核基地、空軍機との破壊を目標とする。
これによって、中国は戦わずして敗北するというのだ。そこまでの出血を覚悟して、日本や台湾を攻めても得策ではないからだ。
中川の意見は採用されず、すでに2023年になってしまった。しかし、中川の「東アジア戦域限定核戦争」という考え方は、今でも有効である。自衛隊がスタンドオフミサイルを早期に開発し、トマホークを導入することが決定している。残された課題は、米軍が日本や台湾などの戦術核ミサイル基地を建設すれば、それでほぼパーフェクトである。
そのためには、我が国は非核三原則を撤廃しなければならないし、米国と台湾との軍事同盟の締結、米国がロシアとの間に締結した中距離核戦力廃絶条約の破棄か、新たに結び直す必要がある。
中川が米軍の日本や台湾への中距離核ミサイル配備にこだわるのは、三カ国が運命共同体となり、守りが鉄壁となるからだ。今すぐには日本の核武装は困難である。米軍の中距離核ミサイルで刺し違える覚悟を示せば、中国とて手を出すことはできないのである。岸田内閣にその覚悟があるかどうかなのである。