日本国柄を成り立たせしめているのが皇室の存在である。天皇陛下の譲位のご意向をめぐっては、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」で専門家からのヒアリングが行われているが、野田幹事長が「退位を認めないような発言をする人がいっぱいいる」と述べるなど、民進党がいちゃもんを付けている▼そもそも今回の譲位をめぐる議論は、NHKの「生前退位」の報道がきっかけであった。それはあまりにもセンセーショナルであった。天皇陛下のご意向をそれなりに踏まえたとしても、開かれた皇室へ前のめりになったことは否めない。明治から以降の日本は、皇室を政治の争いから遠ざけておく意味からも、一天皇一元号であり、明治、大正、昭和がそうであったように、譲位などというのはまったく想定されていなかった▼それを変えるのであれば、当然のごとく有識者の声を聞かなくてはならない。それが自分たちの考えと反するからというだけで批判するのは、自分たちが政治利用したいからではないか。日本国憲法での国民主権は国家を前提にしている。日本の文化や伝統を無視しているわけではない。現在生きている者だけではなく、すでに死者となった者たちや、これから生まれてくる者たちとの結びつきのなかで、物事を決定すべきであり、拙速に判断すべき事柄ではないのである。
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