パーティ券の不記載で「裏金議員」と騒がれたことで、自民党はボロボロになり、石破茂のような人間が総理大臣になった。経済政策は緊縮と増税に向かって突き進んでいる。挙句の果てに、日米同盟も危うくなってきている。
NHKの大河ドラマ「べらぼう」は松平定信の時代のことである。寛政異学金を始めとした言論弾圧が行われ、それ以前の田沼意次の時代には、太田蜀山人の狂歌や、柄井川柳の川柳が全盛を極めたのに、正義と清廉を売りにした松平になると、浮世絵や髪結いまでも贅沢に数えた。山東京伝は手鎖五十日の刑となり、芝居にまで難癖をつけた。倹約が過ぎて不況を招いたのである。
山本夏彦は「汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす」(『寄せては返す波の音』)ということをいいたいがために、松平と田沼を比べた。政治家としての能力もないのに、正義を口にするだけで、まともな政治家と思うことが駄目なのである。山本は批判を恐れず正論を吐いたのである。
石破は所信表明演説で「楽しい日本」という言葉を使い、「多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。そうした活力ある国家」を目指すのだという。危機感が皆無であり、何を言いたいか分からない。「水清ければ魚棲まず」ではないだろうか。下手な正義は国を滅亡に追いやるのである。