つれづれなるままに

日々の思いついたことやエッセイを綴る

60歳のラブレター(6)

2009年01月11日 | 日記
                  お堀に映る日比谷のビル

●夫から妻へ
些細の事で君にあたり、その気まずさから逃げるために、私が近くの川へスケッチに出かけた日のことを覚えていますか。
堤防のベンチに座り、カバンを開けて驚きました。
愛用の筆入れは見当たらず、代わりに見慣れないパッチワークの筆入が出てきたからです。チャックを開ければ中には小さなメモ紙。
広げて見れば、それは君からの手紙でした。
「物を大事にするのもいいですが、あちこち破れていてはみっともないです。これは手芸教室で習った私の初作品。未熟ですが日頃のあなたへの感謝の気持ちだけは十分縫い込んであります。使ってみてください」と書いてありましたね。

定年前に早期退職した君が、家にばかりいては世間から取り残されると、最近良く外出していたのは知っていました。ですが、こんなことをしていたとは・・・。
年とともに会話も減り、互いに相手への関心が薄れてきたと思っていましたが、君はしっかり私を見ていてくれたんですね。申し訳ない気持ちでいっぱいです。

これまで風景ばかり描いてきましたが、今度は君の笑顔を描いて贈ります。それも飛び切りの美人にして・・・。(S.Mさん 大阪市 60歳)
コメント
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