ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2016.3.28 五感で味わえる幸せを思う

2016-03-28 21:51:36 | 日記
 先日、柑橘類のことを書いたけれど、今日はりんごから始まって味覚と嗅覚のお話から。
 我が家ではほぼ毎朝りんごを頂く。「朝のりんごは金」というのは亡くなった義母の口癖で、それはそれはりんご好きの義母は、朝食のデザートに4分の1にしたりんごではとても足りないといった感じで美味しそうに食していた。さて、そろそろりんごも終わりの季節に近づいてきた。瑞々しさもちょっと薄れてモソモソするものが増えてきたように感じる。

 そのりんご。昔のような酸っぱいものは姿を消し、ひたすら糖度の高いものが主流になってきた。〇〇スイートなどと命名されたものはその最たるものか。酸っぱいものはジャムなど加工用に回されることが多いのだろうか。
 それでもやはり果物、ただ甘いだけというのではつまらない、と酸っぱいものが苦にならない(どころか好きな)私は思う。蜜入りりんごを尊んだのは母の世代なのかもしれない。

 さて、朝日新聞のサイトで蜜入りりんごの面白い記事を見つけたので、以下転載させて頂く。

※   ※   ※(転載開始)

「蜜入りリンゴは甘い」は気のせい? 農研機構が謎解明(2016年3月28日10時47分)

 果肉の中心部が半透明になった「蜜入りリンゴ」のおいしさの秘密は、味よりも香りにあった――。そんな研究結果を農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)がまとめた。甘さは普通のものと変わらず、花のような香りの成分がふんだんに含まれていることが分かったという。
 「甘くておいしい」と人気の蜜入りリンゴだが、糖類の量は必ずしも多くはなく、おいしく感じられる理由は謎だった。
 農研機構の田中福代主任研究員は、加工食品の香料などを作る会社の専門職約30人に、蜜入りと蜜なしのリンゴを食べ比べ、香りや味など7項目を客観的に評価してもらった。蜜入りの方が「果物の風味」「花のような風味」「甘い風味」が強い、との結果だったが、香りが分からないように鼻をつまんで試食してもらうと差はつかなかった。
 リンゴの成分を分析すると、蜜入りには「エチルエステル」という物質が豊富に含まれ、蜜なしにはほとんどなかった。蜜の部分は水分が多く酸素が足りない状態にあるため、糖が分解してエタノールができやすく、果物らしい香りにかかわるエチルエステルが増えると考えられるという。
 田中さんは「果物のおいしさは糖度を指標としてきたが、香りにも着目することで品質向上が期待できる」と話している。(吉田晋)

(転載終了)※   ※   ※

 先日の夫ではないけれど、果物の目指すところは糖度第一、なのだろうか。私は香りもとても重要だと思う。
 ふと、抗がん剤の副作用で味覚障害が酷かった頃のことを思い出した。嗅覚はごくごく普通なのだけれど、口に入れた途端、全く予想とは違う味がする。これは哀しかった。どんなに美味しそうな香りをかがされても、味はわからない、というか苦味しか感じないのだ。

 そして、今は亡き患者仲間のKさんが、嗅覚を失ったことを話されていたことも思い出した。治療を続けているうちにいつの頃からか全く匂いを感じなくなったという。だんだん鼻が利かなくなっていったので、あれ、もしかしたら私、匂っていない?という感じだったらしい。

 検査したところ、一番キツイ筈のにんにくの匂いにも反応がなく、おそらく一生回復は見込めないと言われた、と寂しそうにおっしゃっていた。それでも味はわかるので、皆との食事は大丈夫ということだったけれど、ちょっとしたアロマグッズなどを差し上げようとして、「私は匂わないから」と言われたときには、とても申し訳なく切ない思いをした。

 食べることは生きているうえで大きな楽しみだ。そして味覚、嗅覚の相乗作用で美味しさをより感じるものなのだろう。もちろん視覚も触覚も。眼で、鼻で、舌で楽しみ、お肉の焼ける音等を耳で楽しみ、パリッとしたパンなどの手触りを楽しみ、五感を刺激されながら楽しむのが食なのだろう。
 その大きな楽しみを、ある一定の期間だけでなくずっと奪ってしまう薬の副作用は、命と引き換えとはいっても惨いものだ。

 ちょっと話が横道にそれてしまったけれど、こうして五感を保ちながら美味しい食事が出来ること、それは決して当たり前のことではないと改めて思う。果物の糖度も香りも楽しめる今の自分があることを、有難く思いながら過ごしていかねば、と思う。

コメント
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