わたしは森博嗣のSMシリーズのファンだ。大ファンと言ってもいい。
でも、森さんの文章にはひとつだけとても気になる点がある。
それは長音記号「ー」を節約してあることだ。
それでもSMシリーズのころはまだそれほどひどくはなかった。
「ドライバ」とか「コンピュータ」とかは、よそでも見受けられ、
森さん独特のものは「コーヒーメーカ」くらいだった。
わたしなど、これを見ると「コーヒー銘菓」という文字が浮かんだものだが。
ところで、近ごろ、森さんのもっと最近の著作を読む機会があった。
そしたら、長音の欠落が以前よりさらに拡大していた。
記憶が定かではないが、昔の作品では「ヒーロ」なんていうのは見なかった気がする。
また、以前は語尾の長音がなくなるだけだったのに、
ひとつの単語や連語の途中の長音まで落ちているものが出てきた。
「アンダグラウンド」くらいならそれほど奇異には感じないとしても、
「サンダ・バード」や「ナンバ・ワン」にはどうしても違和感を感じてしまう。
英語読みすると、確かにサンダーバードより「サンダ・バード」のほうが
音としては近いが、カタカナ表記を見た時点でわたしは頭が日本語モードに切り替わり、
小さいころから見慣れたサンダーバードのほうが自然に思えてしまうのだ。
後者なんて、「まいど1号」と並ぶ大阪発の別の人工衛星か(なんば1号なんてね)
と思わず笑ってしまった。
英語のカタカナ表記にはこだわりを持つ人も大勢いるし、
なるべく原語の発音を正しく再現したいというのも理解できる。
もっとも、わたしの知っているある人は、変にかっこつけようとするあまり、
ホームページのことをいつも「フォームページ」と書いていてイタかったが。
それはさておき、いくら原語に近いとしても、一般に通用している表記から
あまりにもかけ離れたものが頻出するようになると、
もはやストーリーに集中できなくなってしまう。
慣れれば平気と言う人もいるかもしれないが、
少なくともわたしは旧人類なんだろう、どうしてもだめだった。