(こはるびや/わすれてかまわぬ/ことばかり)
この世に、およそ大事なことなんて一つもない。過ぎ去ってみれば、大事にしていたことが、自分を苦しめていたのだ。このことが分かれば、人生が随分楽になるはずだ。
「こだわらず、とらわれず、かたよらず」という格言があるように、大事なこと、というのは、執着であり、我欲であり、争いや孤独の種であった。
たぶん、この作者の心境は、かの有名な菊田一夫のラジオドラマ「君の名は」の冒頭のナレーション、「忘れ得ずして忘却を誓う心の虚しさよ」と同じなのではないか。
だから、神様は、年をとるにつれて物忘れをひどくさせ、ついには痴呆や恍惚の人にさせて、現生や老いの苦しみから解放してくれるのではないか、と思う。
つまり、「忘れることは幸せの種」なのである。