夕紅葉死ぬこと残し燃え尽くす 章子
庭下駄の音をはばかる星月夜
コスモスや鋼材を切る鉄仮面 炎火
虫の声砲丸投げのライン哉
朝まだき騒ぐ鴉や末枯るる 鼓夢
ヨーヨーマ弾く音さやけし後の月
点滴の一滴の間や十三夜 薪
整列の野球少年雁渡る
十三夜熱めのお湯に設定す 洋子
オムレツを手早く返す野分晴
呆気無き人との別れ十三夜 稱子
路地に満つ夕餉の匂ひ秋の暮
回復の兆し病間に十三夜 正太
新米を供えて今日は庭仕事
何もせず何も出来ない山は秋 遊石
リンゴ剥く音も静けき独りの夜
江戸前の風を集めて菊供養 歩智
今日も又抜く猫じゃらし散歩道
満月や万葉の湯に虫の声 空白
本門寺伽藍九月の夕日時
秋の風薬草からから乾びけり 雲水
野菊咲く唯のノギクと思ひけり