(かまたきの/けむりたたせて/ゆうこくき)
41年前の11月25日、放浪の途中の長崎の食堂で三島由紀夫の自決をテレビニュースで知った。
私は、この事件を誰かと話したくて、長崎の街をさまよった。勿論、見知らぬ土地で話し合える知人などおらず、誰かに話しかける勇気もなく、唯うろうろとさまよい歩いただけだった。
当時の私は、三島由紀夫を馬鹿にしていたのである。三島の作品や言動を見ていると、「彼は、とっくに死んでいるはずであり、生きているのはおかしい」と思っていたからである。
その三島由紀夫が、彼の信念に則り自決した。彼は、自分の思いを実行に移し、成し遂げてしまった。自決の仕方とか、場所とか、そんなことはどうでも良かった。実行したことに驚愕したのである。
ハナユズ(花柚子)