五ミリほど蓬の芽にも葉の形 豊春
ランドセル売場賑い春来る
病床に福よぶ豆を置いてくる 正太
冬の鳩防災空地に集いけり
春めくやするりと入る雨戸かな 洋子
髪切りて春一番に吹かれおり
淡雪や大型ダンプの古タイヤ 炎火
節分や酒屋の棚の鬼ころし
暮れなずむ日金の山に鳥帰る 遊石
沈丁の揺れやまずして雨となる
春潮や粗朶運び来る波頭 鼓夢
紅梅や世を憚らぬ媼声
春めくや財布の小銭ざわめけり 章子
梅の寺雲水ひとり庭を掃く
一服のもらい煙草や春の月 薪
囀りに片耳あずけ尾根越える
春の霧街灯まるく包み込み 歩智
えッこんな時間ですかと日脚伸ぶ
ここだけの話すぐ漏れ風は春 稱子
行く道はまた戻る道梅香る
春ちかい二月二十二日母しのぶ 空白
卒塔婆の打ち合う音も春めいて
割られたる楠芬々と春めける 雲水
雪催ひねもす降らず暮れてゆく