今や女性演歌の第一人者になった感のある市川由紀乃さん。その今年の勝負曲となる新曲『秘桜』が、ちょうどひと月前の3月10日に発売されていて、このブログで取り上げようと思っているうちに一か月が経ってしまいました。
この『秘桜』は、一昨年に話題となった『雪恋華』に匹敵するような、大変ドラマチックな内容の曲です。
出だしから「まさか本気じゃないですね」と鋭い語りかけのフレーズで始まり、「逢いたいよ 逢いたいよ」のところから一気に感情が高まります。
そして、「色は煩悩 ああ百八色」の、ここの納め方がこの曲の一番の特徴だと言えるでしょう。
仏教の「百八煩悩」については、除夜の鐘を百八回撞くことからよく知られていますが、これを演歌の中でストレートに使うのはなかなか思い切った着想です。
「秘桜」とは女心の秘めた情念を桜になぞらえたもので、その花の色が煩悩の百八色あるというわけです。
また「千里駆けても」「闇をすり抜け」、「抱きに来て」との激しい情熱がほとばしるようなフレーズもあって、まことにスケールの大きな曲になっています。
この曲を彼女は、激しい情念を内にこめるように実にうまく歌っていると思います。最近の『懐かしいマッチの炎』『なごり歌』といったフォーク調の曲から、こういった情念こもった演歌まで歌いこなす真の実力派歌手だと実感します。
コロナ禍が一向におさまらない中ですが、今年はこの曲が大いに演歌界を盛り上げてくれそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=b8E1fIt03GQ