社会を見て、聞いて、感じる。

人生そのものがフィールドワーク。

9月13日(日)

2015年09月24日 23時24分34秒 | 2015年

  4時半起床。今日から2泊3日で、北海道へ馬旅行。牧場めぐり、競馬、乗馬と、とにかく馬三昧の旅行である。身支度を整え、5時半前に家を出る。

  羽田空港7時10分発のJAL595便に乗り、新千歳空港へ。

  新千歳空港には、ほぼ予定通りの9時40分頃に到着。さっそくレンタカーを借りる。まずは、国内最大の競馬グループである社台グループの運営する馬の総合テーマパーク、ノーザンホースパークへ。馬車に乗ったり、乗馬をしたり、功労馬たちと会うことが出来る場所である。さっそく厩舎を訪ねてみると、かわいい馬たちがたくさん。私が熱心に眺めていると、スタッフの方がわざわざ馬を馬房から出してくれたりして、直接触れ合うことも出来た。

クォーターフォースのブロッサムちゃん(9歳牝馬)。馬の出産には通常人が立ち会うのだが、ブロッサムのお母さんのチェリーは誰の助けも借りずに彼女を産んだらしく、ある朝スタッフが馬房を覗いたらいつの間にかブロッサムがいたらしい。これから散歩に出かけるのだが、目を閉じて眠そうにしている。

マーフィー君。スタッフさんがわざわざ馬房を開けて触らせてくれた。おとなしくて、甘えん坊。

お散歩帰りのお馬さんとも遭遇。疲れているだろうに、きちんと私にも愛想を振りまいてくれた。

運動が終わると、念入りにお手入れをしてもらえる。

こんなにたくさんの鞍が保管されているとは。やはり、1人1つ専用のものを持つのだろうか。

馬たちのエサが置かれている。近くの表を見る限り、馬それぞれに個別の配合がなされるらしい。

厩舎を出ると、ちょうど近くの会場で乗馬の大会が開催されていた。学生馬術選手権なので、大学生による大会のようだ。馬が障害を飛び越える様子は迫力満点で、ついつい見入ってしまう。

  今回私がここを訪れた一番の目的は、ウインドインハーヘアという馬に会うためである。アイルランドで生産され、イギリスで走っていた競走馬。しかし、彼女が有名なのは競走馬としてではない。繁殖牝馬として日本に輸入された後、競馬を嗜む人はもちろん、競馬に関わったことがない人でも聞いたことぐらいはあるだろう名馬、ディープインパクトを産んだからである。生で見た彼女は予想通り気品に溢れ、私のような一見には全く興味も示さない。自分が名牝として確固たる地位にいることを理解しているかのような、凛々しい立ち振る舞いに終始していた。

同じ厩舎の中には、2010年に春の天皇賞を勝ったジャガーメイルもいた。こちらは、一応私にも興味を持ってくれたようだ。ありがとう。

  車に乗り、同じく社台グループの持つ施設、社台スタリオンステーションへ移動する。こちらでは、先ほどのウインドインハーヘアから産まれた三冠馬で史上最強ともいわれるディープインパクトや、歴代ダート馬最強の呼び声も高いクロフネ、秋の天皇賞と有馬記念を2回ずつ勝っているシンボリクリスエスといった、種牡馬になってからも大活躍している馬たちと会うことが出来る。そうはいっても、彼らは現役の種牡馬。特に、年間に億単位のお金を稼ぎ出す稼ぎ頭の彼らには、そこまで近づくことは出来ない。しかし、例え少し遠くても、彼らの姿を生で見られるというのは、本当に貴重な体験である。

ディープインパクト。かつては自身が数々のレースを制し、今は彼の産駒(子ども)たちが大活躍している。

クロフネ。今は「シロフネ」のほうがしっくりくるような気もする。現役当初は芦毛だったが、年を重ねるにつれてどんどん白くなっているらしい。

シンボリクリスエス。黒鹿毛の馬体がかっこいい。そして、とてつもない存在感を放っている。

トウカイテイオーのお墓もここにあった。

  2時間半ほど車を走らせ、帯広競馬場へ向かう。帯広競馬場では、通常の競馬ではなく、ばんえい競馬という種類の競馬が行われている。ばんえい競馬とは、鉄のそりを曳いた馬による競争である。コースは200メートルの直線で、途中に2カ所の障害(坂)がある。馬の種類もサラブレッドではなく、その約2倍の大きさのばん馬(ばんえい馬)によってレースが行われる。ばん馬は、馬の種類の中で世界で最も大きいそうだ。そして、この競馬を見ることが出来るのは、世界中でこの帯広競馬場だけである。

  第1レースの開始まで余裕がある時間に着いたので、まずは腹ごしらえ。帯広競馬場の入口にある「とかちむら」に入っている豚丼のお店「たむら」へ入る。注文は、当然ながら帯広名物の豚丼。甘さの強めな甘辛ダレで味付けされた豚肉は、豚肉自身の脂の甘さも加わって、とても美味しい。

  競馬場の中は、思ったよりも広々としている。また、全体的に設備は古いものの、雰囲気は明るい。いかにも場末な感じを予想していたが、カップルや家族連れも多く、全体的にウキウキとした空気が流れている。

  いよいよ、第1レース。先ほど説明したように、同じ競馬でもばんえい競馬は全く種類が違うものなので、予想の仕方すらわからない。そのため、このレースは完全に何となく元気そうな馬を買った。

  初めて見るばんえい競馬の迫力は、想像を遥かに超えるものだった。スタートした馬たちは見た目通りの怪力でそりを曳き始め、1つめの小さな障害(坂)は問題なくクリアする。その後、1つめと2つめの障害の間で間を置く。実際に、止まって休憩するのだ。そして、最大の難関、2つめの大きな障害(坂)に全力で挑むのだ。数百キロ(最高1トン!)のそりを曳きながら急な坂を登るのは本当に大変で、馬たちは必至の形相で1歩ずつ先へ進む。中には、前に進めずに同じ場所でもがいているだけの馬も出て来る。そんな馬たちに対し、騎手が容赦なく鞭を振るう。「バチーン!」。その音は、一般の競馬で用いられる鞭の音とは全く異なる、重厚感のあるものだった。しかも、大抵の騎手がその鞭をほぼ絶え間なく使っている。「馬にとっては鞭で打たれるのは痛くはなく、単なる合図に過ぎない」というのはよく言われることだが(それすら本当かどうか怪しいものだ)、このばんえい競馬で使われる鞭については、どう考えても馬が痛みを感じているように見える。このように、初めてばんえい競馬を見た私の率直な感想は、「馬がかわいそう」だった。

  第1レース終了後、バックヤードツアーに参加する。所要時間は約30分。参加費500円で、待機所や装鞍所、厩舎地域を見学することができ、最後には旧放送席からレースを観戦することができる。しかも、ばんえい競馬事務局の方の案内が予想以上に深い内容で興味深い。 

待機所。次のレースに出る馬たちが、体重を計ったり、獣医や調教師による馬体検査を受けたりしている。

装鞍所。火花が飛び散っていたりするが、馬はおとなしくしている。

検体所。レース後、1着から6着に入った馬は、ここでドーピング検査を受ける。

練習用のそりがたくさん並んでいる。

採決委員室。ここで最終的なレース結果が決まる。

各レースの売上高が記録されている。

旧放送席。ここからレースを見ることができる。

事務局のお姉さんの案内が上手で、とても勉強になった。

ちょっと遠いが、パドックの様子もよく見える。解説者はいつも、こんな角度からパドックを見ているのか。

間もなくレースが始まる。

隣には、現在の実況席がある。

ついに発走。

全馬、無事にゴールしました。

  大満足でツアーを終え、ふれあいコーナーに立ち寄る。ここでは、ばんえい馬と直接触れ合うことが出来る。間近で見るばんえい馬の迫力は、やはりすごい。普通のサラブレッドでも威圧感があるのに、その倍の大きさなのだ。体つきも筋骨隆々で、人間ならプロレスラー体型といったところだろうか。その一方、人参を欲しがってアピールしてくる姿なんかは仔馬のような愛くるしさもあり、そのギャップが何とも言えなかった。

  レースへ戻る。全然予想がわからないので馬券は適当に買い、レースを眺めるというパターンを繰り返す。繰り返し見てわかったことは、ばんえい競馬のポイントは、馬そのもののパワーももちろんではあるが、第1障害と第2障害の間で入る休憩と、第2障害を乾坤一擲の力で突破するタイミングだということである。馬の力に大きな差がない場合、この2つのタイミングによって、結果は全く変わってくるのではないだろうか。とにかく鞭を使って発奮を促すのではなく、緩急をうまく使うことが大切なのだ。

  先ほどのバックヤードツアーの際にも聞いたのだが、ばんえい競馬で騎手が馬に跨る際には鞍を使わず、そのまま馬の背中に乗っている。一見すると簡単そうに見えるかもしれないが、実はこれはなかなかすごいことらしい。

  レースの合間に、建物内の食堂で腹ごしらえ。真偽は定かではないが、このお店が発祥だというカレーラーメンを食べる。卵麺とカレーが、予想していた以上によく合う。これは普通に美味しい。ただ、同じ麺なら、やはりカレーにはうどんのほうが適しているとは思う。

  再びレースに戻る。先ほど少しばんえい競馬のポイントがわかってきたようなことを書いたが、結局のところレースの予想は全く出来ないので、面白い名前の馬を買っては惨敗するということを繰り返した。そのうちに、日が暮れていく。良い1日の過ごし方だ。

  夕食は、一旦競馬場を出て「とかちむら」へ。昼間に通った時から気になっていた洋食屋「million sante」に入る。競馬場の食事処としては違和感のあるくらいお洒落なお店だ。注文は、「足寄産短角牛&2種の熟成肉食べ比べセット」。同じ足寄産の短角牛を、通常版と2種類の熟成版、合計3パターン食べることが出来る。どれも結構な歯ごたえがあって肉感溢れるものだったが、熟成が進めば進むほど、赤身にさしが入って甘みが増すように感じられた。

十勝産ハーブティー。香りが強くて爽やかな味。

通常版。

熟成したもの。

更に熟成したもの。

デザートのティラミスと北海道ミルク(ホット)も美味しかった。そして、ここで初めて競馬場併設のお店っぽさが出て来た。

  再び競馬場へ戻り、終盤の勝負へ。結局、最終の1つ手前の第10レースまで観戦した。何だかんだで、ほぼフルにばんえい競馬を楽しんだことになる。時間にすると約6時間。それでも、あっという間だ。今回は全く予想が出来ずに惨敗したが、ばんえい競馬が同じ「競馬」という名前でも普通の競馬とは全く異質のものであるということ、そして、それが持つ独特の魅力があるということを身を以って体験することが出来た。

  21時前にホテルへ戻る。朝が早かったのと、明日も朝早くに出発なので、日付が変わる前には眠りについた。


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