コモン・スレッド~ソングス・オブ・イーグルス(1993)
1.テイク・イット・イージー/トラヴィス・トリット
2.ピースフル・イージー・フィーリング/リトル・テキサス
3.ならず者/クリント・ブラック
4.ハートエイク・トゥナイト/ジョン・アンダーソン
5.テキーラ・サンライズ/アラン・ジャクソン
6.テイク・イット・トゥー・ザ・リミット/スージー・ボガス
7.言いだせなくて/ヴィンス・ギル
8.いつわりの瞳/ダイアモンド・リオ
9.ニュー・キッド・イン・タウン/トリーシャ・イヤーウッド
10.サタデイ・ナイト/ビリー・ディーン
11.過ぎた事/タニヤ・タッカー
12.我が愛の至上/ブルックス&ダン
13.サッド・カフェ/ロリー・モーガン
先日、イーグルス・トリビュート・セッションを観戦した。昨年の夏に参加したセッションの第4回だ。今回は諸事情により演奏には参加せず、観戦オンリーだったりだが、それでも十分楽しめた。イーグルスって、自分で演るより人の演奏を聴いてる方が楽しいかも(笑)
セッションそのものは、演奏も歌もグレードが高く、素晴らしいものだった。大好きなイーグルスの曲を生き生きとブレイする皆さんを見ていて、ふと思い出したのが、この『コモン・スレッド~ソングス・オブ・イーグルス』だ。イークルスのコピー(カバー)ではあるのだが、やはりオリジナルとは印象が異なり、新たな発見がある、という点で共通している。
この『コモン・スレッド』だが、参加しているのはカントリー畑のミュージシャンたちであり、選曲もいかにもそれっぽい。「ホテル・カリフォルニア」「呪われた夜」「魔女のささやき」といった、シリアスというか雰囲気暗い曲がないのである。個人的には、イーグルスはカントリー系の曲が好きなので、明るく軽やかでほのぼのとした曲で占められたこのアルバム、曲目を見ただけでもそそらるものがあった。
で、実際に聴いてみると、これがまた実に良いのである。前述したけど、アレンジもほとんど原曲のままだし、細かいフレージングの違いはあれど、ほんとコピーみたいなものだ。しかし、オリジナルをそのままコピーしているようでも、何か雰囲気が違う。洗練された雰囲気を感じる本家と比べ、どこか荒っぽい感じがするが、本家よりずっと明るく穏やかな印象を受ける。イーグルスの場合、「テイク・イット・イージー」の対極に「ホテル・カリフォルニア」があり、どちらもイーグルスに他ならないのだが、後者の持つ“重さ”が前者に乗り移ってしまい、結果として、どの曲もミョーにシリアスに聴こえてしまう、というのが特に後期に感じられたが、この『コモン・スレッド』で聴ける「テイク・イット・イージー」には、そういうシリアスさはない。これこそイーグルスの本質なのだ、と主張しているかのようだ。オリジナルでは、グレン・フライがリードボーカルを担当していた曲が多いのも、何やら象徴的だったりして(笑)
収められたイーグルス・カバーは、どれもカントリーやフォークの雰囲気が強い。カントリー系のアーティストばかりだから、当然といえば当然だが。また、前述したように、なんとなく荒っぽい感じがするのだが、それはドラムの音が前面に出ている事にもよるのだろう。本家は、ドラムは抑え気味だったから、このアルバムのように、ドラムを強調すると聴きなれた曲も印象が変わる。その点でも、新鮮に聴けた。大好きな曲ばかりだし(笑)。今でも、よく聴いてる。
参加アーティストの中で、当時名前を知ってたのは、ヴィンス・ギルとジョン・アンダーソン(もちろん、イエスの人ではない)とタニヤ・タッカー(ハロー・ミスター・サンシャイン!)くらいだったけど、そんな事は気にならずに聴けた。女性が歌うイーグルス・ナンバーもいいものだ。一番気に入ったのは、トリーシャ・イヤーウッドによる「ニュー・キッド・イン・タウン」で、後に彼女のアルバムも買ってしまったくらい(笑)。なかなか美人で、90年代のリンダ・ロンシュタット、なんていわれていたような(笑)
この『コモン・スレッド』はベストセラーとなり、それがきっかけとなって、イーグルス再結成の話が持ち上がった、というのは有名な話だけど、イーグルスのカントリーテイストが強く打ち出されているだけに、アメリカ人がイーグルスに何を求めていたのか、なんて事まで、そこはかとなく想像できてしまう好盤である。90年代前半は、やたらと大物アーティストのトリビュート・アルバムが発売されたけど、その中でも代表的な一枚と言っていいと思う。