幻想の摩天楼/スティーリー・ダン(1976)
1.滅びゆく英雄
2.アルタミラの洞窟の警告
3.最後の無法者
4.狂った町
5.トルコ帽もないのに
6.緑のイヤリング
7.ハイチ式離婚
8.裏切りの売女
9.幻想の摩天楼
久々の「想い出のアルバム」シリーズ、前回スティーリー・ダンの事を書いたので、せっかくだし(笑)続けてスティーリー・ダン・ネタでいってみたい。
前回も書いたように、僕がスティーリー・ダンの名前を知ったのは、この『幻想の摩天楼』が出た頃である。確か、当時のミュージック・ライブ誌のレコード評のコーナーで、“今月最高”の星五つ貰っていたはず。そんなに一般的には人気あるとは思えなかったスティーリー・ダンだが、実は高い評価を受けていたのだ。あの、ミュージック・ライフでさえ“今月最高”だったのだから(笑)
実際、彼らの最高傑作と言っていいと思う。世間的には、次作となる『彩(AJA)』がスティーリー・ダンの最高傑作であり代表作と言われていて、それを否定する気は毛頭ないが、なんとなく一流セッション・ミュージシャンたちの演奏の比重が高い感じのする『彩(AJA)』より、この『幻想の摩天楼』までは、あくまでもフェイゲン&ベッカーの楽曲及びコンセプトを具現化する為に、ミュージャンたちが演奏してるような感じがする。そっちの方がスティーリー・ダンらしいという気がするのだ。だから、僕は『幻想の摩天楼』や『うそつきケティ』の方が好きである。
この『幻想の摩天楼』というアルバム、一言で言ってしまうと、とにかくカッコいい。元々、フェイゲン&ベッカーの2人はジャズ好きで、デビュー時からロックとは一言で言い切れない、摩訶不思議な音楽性が特徴だった。よく分からんけど、コード進行も複雑らしい。彼らはスティーリー・ダンを結成する前に、ソングライターとして出版社と契約してたらしいが、「デモテープを聞かせると、どいつもこいつも、もう勘弁してくれ、とか言って外へ出て行ってしまうんだ」なんて本人たちが言ってるのを読んだ記憶があるくらいで、フツーの人には耐え難いような曲を作ってたそうな。スティーリー・ダンとしてデビューしてから、順調にヒットを放っているのを見ると、そんなひどい曲を作ってたとは思えないけど(笑) ま、そんな彼らのソングライターとしての才とアレンジの妙、そしてラリー・カールトン、チャック・レイニーといった一流ミュージシャンたちの演奏が見事に結実し、捨て曲なしの完璧なアルバムに仕上がっている。楽曲のレベルという点だけで見れば、『彩(AJA)』以上ではないか。個人的には、「滅びゆく英雄」「狂った町」「緑のイヤリング」あたりが好きだ。ロックと呼ぶには洗練され過ぎてるし、ジャズ系に分類するには荒っぽい感じがある。AORという程軟弱ではない。セオリーにとらわれない曲作り、単純なエイトビートは登場しないリズム・パターン、ベースは黒っぽいけど、ギターソロは無骨な音だったりするミスマッチ感等々、こういった要素が微妙に絡み合って、ジャンル分け不能なスティーリー・ダンの音楽を構成している。病みつきになる事うけあいである。
何故か、このスティーリー・ダンって、ベスト盤が何種類も出ているが、やっぱりオリジナル・アルバムを聴かなくては。というか、ベスト盤聴いてるだけでは物足りなくなって、結局オリジナル・アルバムも買ってしまうので、同じ事なんだな(爆)
アマゾンやHMVのサイトで、スティーリー・ダンを検索すると、同傾向のアーティストとして、ドゥービーやボズ・スキャッグス、TOTOなんてあたりの名前があるが、それに混じってディーコン・ブルーなんて名前もある。ご存知、スティーリー・ダンの「ディーコン・ブルース」からバンド名をつけた、というバンドで、80年代イギリスでは大人気だった。が、名前だけで、音楽性はスティーリー・ダンと同傾向といえるのか? ま、僕の場合、ディーコン・ブルーは一枚聴いてみたものの、印象悪くてそれきりになってるので、何とも言えないが(笑)
余談だが、この『幻想の摩天楼』に入っている「トルコ帽もないのに」だけど、原題は「The Fez」という。辞書にも“トルコ帽”と出ているが、これずばり、コ○○ームという意味があるらしい。この曲の歌詞もいきなり“お前はトルコ帽なしでやるのか”と始まる訳で(笑) らしいというか、何というか。もし、僕がスティーリー・ダンのコピバンを結成したら、バンド名は絶対に「The Fez」にしたいものだ(爆)