Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 30

2019-08-08 09:25:47 | 日記

   「まぁ、この子は、」

母親に向かって何て事を言うんだい。と、母は当然憮然として顔に不満を顕にした。

   お前は家の事、自分は子供の教育だ、この子の事は自分に任せてくれ。そう父は言っていたようだ。母はその様な事を口にすると、あの人に任せたらこんな子に育ってしまって、と、私の前でぶつぶつこぼし出した。

   そんな母に、お母さん、お父さんはちゃんと私の事を教育しているよと私は言った。その証拠に、と、私はこの障子の事だって教えて貰っていると父を弁護した。母はへーという感じで、障子の事だって?と、どんな事だいと聞いて来た。

   母は、私の方法以上に上手くやれる方法があるのかしらね、あんな堅い人が。など言うと、プット吹き出した。どれどれその方法というのを教えてもらおうかねと言う。私は2日前の事だと話し出した。

   これこれしかじかと私が話すと、最初、興味深い顔で聞いていた母の顔は、ハッとした顔つきになり、終わりの頃になると暗く沈んだ。目を伏せ俯いて、叱られた子供の様にしゅんとすると、私の話し、祖父母はこのような事に厳しくきつく叱られるという段になると、内心の動揺を隠せないらしく、どぎまぎしている状態がその行動に顕著になった。彼女は居ても立っても居られないという状態で盛んに体をばたつかせていた。

「障子にこんな事をするのは馬鹿で、低俗な人間なんだって。」

父がそう言っていたと言うと、実際父は私にそう言っていたのだ、大人になってまでこんな事をする者は滅多にいない、しない者は子供の頃だってしない。家も皆そうだった、今迄はな、と。そんな彼のした話も、彼の子である私は、彼の妻に具に語った。

   ここで、私からやや離れ、背中を見せていた母は動きを止めた。振り返って、私に近付いて来た彼女の眉間には深い皺が刻まれていた。彼女は感極まったらしく、如何しようと呟きながら私の顔を見詰めたが、私に何か出来る訳がなかった。母はそのまま弱り切った表情で私を見つめていた。

   暫くして

「おまえのせいでしょ。」

母は言った。お前が障子の向こうを見たいと言うから、…ここに穴が開いたんだ。言い訳の様に力無くそんな事を言う、そうでしょう、と。   

   私は勿論、その穴は母が開けたのであり、独りでに開いたわけじゃ無いと言うと、父が注意していたのに、お母さんは本当に馬鹿なのか、低俗なのか、子供でもしない子はしないというのに、と父の言葉を繰り返した。

   子供の私だってしなかったのに、と言うと、母の困惑していた気色が急に変わった。彼女はそうしようと言うと、

「そうだったよね。」

と言い、私の両肩をポンと叩いた。そうして、母はスッと立ち上がると、次の間ヘと足を進めた。母はその儘、祖父母の部屋に通じる隣の襖戸から、失礼しますと声を掛けた後、向こうの部屋へと姿を消して行った。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-08-08 09:12:46 | 日記
 
土筆(152)

 「さぁ、顔ぶれも揃ったし始めようか。」蜻蛉さんは言うと茜さんに目配せして、先に立ってスタスタ歩き出しました。3人は境内の石碑の何時もの場所までやって来ました。早速石を拾って、......
 

 今日は立秋です。早い物ですね。残暑見舞いに入って行くのでしょうか。