Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 37

2019-08-22 09:16:41 | 日記

 本当にまぁ、母さんにはあれが有るからなぁ。父はそう言うと私を見て悪戯っぽく笑った。どうやら自分の母がどこかに隠れていて、突然目の前に現れるという事態は父の想定内の出来事であったらしい。私にはこの時の父の仕草や顔付が普段に無く子供っぽく映って見え微笑んだ。

「本当にこんな物で子供を叩くと思ったんだからなぁ。」

父は階段に残っていた冊子を手に取り上げた。

「あの人も、父と同じで俺の事、自分の子供の事を本当には分かっていないんだなぁ。」

あんなによく出来た人なのに、実際、あれの言う通りなのかもしれない。父は何だか元気無く肩を落とした。

 と、急に玄関の戸が勢いよく開く音がして、バタバタと騒々しく部屋に祖父が転がり込んで来た。父の手に冊子が有るのを見て、彼はお前やっぱりと言うなり素早くバシンと彼の平手が父の頬に飛んだ。父は反射的に打たれた頬に手を遣り大きく目を見開いて驚きの表情をした。私も同様にポカンと大きな口を開けてそんな祖父と父の様子を見上げていた。

 「母さんに話を聞いたが、やはりこんな事になっていたのか。」

駄目だろう、こんな物で子供を叩いて。祖父は目を怒らせて息子に言い寄った。急いで帰って来てよかった。そう祖父は言うと私の方に顔を向けて優しく微笑んだ。

「悪いお父さんだねぇ、でも、私が帰って来たからもう大丈夫だ。」

祖父は悠々と構えて背筋を伸ばした。私がこの家の主なんだから、不肖の息子に、孫に指一本触れさせる様な事はしないよ。そう言うと彼は私の目の前で、如何にも男らしく一家の大黒柱然として明るく笑うと畳の上に足を踏ん張って立って見せた。そんな祖父の朗らかな顔付と様子は、実に私の父譲り、嫌、彼の息子がこの父から譲り受けた物のようだ。この時、私は祖父と父ははっきり似ていると感じた。そして目の前の老若2人の男性を眺め何だか微笑ましくなった。

 私の目の前で突如として繰り広げられた活劇だったが、それが如何やら祖父が私の為に心を砕いた為に行われたのだ、そう分かって来ると、私の内にはしみじみとした喜びが湧き上がって来た。この時、私は明るい幸福感に満たされていた。そして、この時のハッキリした物事の事態が分からなかった私は、私の父に何の同情心も気の毒さも感じていなかった。唯々お祖父ちゃんありがとうと感謝していた。

 「ありがとう、お祖父ちゃん。」

私の言葉に祖父は至極満足の笑みと数回の頷きを返してくれた。そんな祖父孫の様子に収まらないのは無実の罪で打たれた父であったのは言うまでも無かった。「一寸父さん、」彼はそう言うと自分の父の肩に手を掛けた。すると祖父のにこやかだった顔付きが変わり、やや緊張して躊躇した影が彼の顔を走ったが、祖父は笑顔を私に向けると、

「何、お前が心配する事はないよ。」

そう言うと、振り向きざまに肩で父の手を払いのけると、「お前父とやる気なんだな。」と言う声と共に祖父の背は居丈高に伸び、彼は面と向かって私の父と対峙した。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-08-22 09:10:19 | 日記
 
土筆(163)

 その後は涙を引っ込めようとして焦れば焦る程、当の涙は溢れ出て来て止まらないのでした。流石に蛍さんもこれにはげんなりしてしまいました。もう悲しくないのに、止めど無く涙だけが瞳から溢......
 

 曇り空の日。お天気の話題が1番無難な話題ですね。