Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華 41

2019-08-28 11:13:03 | 日記

 何時もと特にそう変わりなく朝食が済み、私は何思うという所無く一人居間に残り佇んでいた。昨晩、今朝と父や祖母がご飯の介添えをしてくれた。それも普段とそう変わりがあるという物でもない。私には特に違和感が無かった。唯、部屋にポツンと1人でいる時に声を掛けて来る人が1人減った分、私の孤独の間という物が少々増えた。

 私は所在無さにぽかんと部屋や吹き抜けの空間を眺めてみた。そこで私の目は障子の穴に引きつけられた。ああと思う。そういえば母という人がいたな、あの人はもう家にはいないんだっけ。そう思うと、それなりに何だか涼しい気分になった。

障子戸に寄って小さく開いた穴に軽く人差指で触れてみる。その儘そうっと指の腹でくるくる円をなぞってみる。すると昨日のあの人の言葉が私の脳裏に甦って来た。

 「お前の為に…、」と私は我知らずに呟いて、自分の声にハッとして指を引っ込めた。お前の為にか、私の為にあの人はこの穴をここに開けたのか、そう思うと苦笑いが浮かんで来た。『迷惑、そう迷惑だ。』私は腕を下ろすと拳を握り締めた。私にはとても迷惑な話だと思った。行儀の悪い事を、私にあの人は教えようとしていたじゃないか、そう思ってみる。でも何だか、何か心に蟠りの様な物が有るのだ。この時の私の胸の内には、その蟠りの正体について全く理解できないというもどかしさが有った。首を捻って数回考えていたが、さっぱり答えは出てこない。『何だろう?。』再び私は障子の穴に目を遣った。

 先程の様に、私は障子の穴に指を掛けたい衝動に駆られた。が、そう度々指を掛けて誰かに見られたならば、母に賛同して私が穴を開けている、又は広げているとその目撃者に勘ぐられそうだ。それも真意では無い。私は穴を見詰めたまま人差し指を曲げたり伸ばしたりしていた。

 不意に父が台所に続く廊下から居間へと入って来た。私の様子を見詰めると、

「お前やっぱり。」

と言って、めっ!と叱った。穴を開けようとしていたな。昨日の今日なのに、何て奴だ。そんな事を言う。私は父の勢いと語調の強さに委縮してしまった。おどおどと後退りして身を屈めた。そうして何もしていない、何もする気は無いのだという事を伝えようとして拳を確りと握りしめた。この時の私は怖さで口が利けなかったのだ。私はこうする事で穴を開ける指を出そうとしていないという自分の意思の伝達、その事を分って欲しいと父への意思の疎通を図ったのだ。

 しかし、父は目を怒らせた儘だった。彼は口を開いてやっぱりなと言うと、私の傍らをずんずん通り過ぎ、思い出したように戻ると、私のお尻をペン!と1回叩いて来た。彼は再び踵を返して次の間へ戻ると、そのままの勢いで躊躇せずに祖父母の部屋へと消えた。

「母さん、やっぱりだ。」

やっぱりあの穴は智が開けたんだ。父の祖父母に進言する声が聞こえた。私はその声にはぁっと肩で大きな溜息を吐いた。

『父は如何して私の事を間違って見るのだろうか。』

この言葉は私が物心つくようになってから、折に触れて私の悩みの種となって私を苦しめていた。自分の事を父にちゃんと正しく見てもらいたい、理解してもらいたい。その願いが私の心を酷く圧迫して胸苦しくさせると、暗い淵にでも沈むような気持になるのだった。


今日の思い出を振り返ってみる

2019-08-28 11:10:05 | 日記
 
土筆(170)

 その後、不満が晴れずに不機嫌なままの蛍さんの母と、母の不機嫌の理由が分からないで困っている蛍さんの母子2人を奥に残したまま、祖母は玄関まで1人、曙さん達親子を送って出てその母親に......
 

 雨模様の先週今週。今日も雨。明日、明後日はどうなるのでしょうか。9月中旬迄すっきりしないのかもしれません。