碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

新社会人の皆さん、おめでとう!

2011年04月01日 | 本・新聞・雑誌・活字

4月1日です。

新社会人の皆さん、おめでとう!

中には、このご時世で、入社式も行われない会社もあるでしょう。

でも、とにかく今日から新社会人です。新入社員です。

やはり、「おめでとう!」です。

この国が大変な時に就職活動を続け、大変な春に社会に出たわけですが、そんな状況なんぞに負けず、元気にスタートを切ってください。


毎年4月1日は、新社会人・新入社員の皆さんに、この本を、この文章を紹介することに決めています。

山口瞳さんの名著『新入社員諸君!』(角川書店)。



写真の文庫本は、私が社会人になった春に購入した昭和53(1978)年版です。

書かれたのはだいぶ前で、本もよれよれですが、今もときどき読み返します。

時間が経とうと、時代が変わろうと、変わらない真理みたいなものが、ここにはあるからです。

ぜひ、ご一読ください。

以下は抜粋なので、興味をもったら、この本を探して全文を読んでみることをおススメします。


まず、会社へはいったら、学校とちがっていろんな人間がいることを知っておいてください。

立身出世の本やマネージメントの書物を読むこともムダではありませんが、まず同僚・上役と仲良くすることが先決です。これは決して妥協でもイヤラシイことでもありません。人間と人間のおつきあいということです。

つぎに申し上げたいことは、一所懸命にはたらきなさいということです。

誠心誠意ではたらき有能な社員になってください。有能な社員とは、役に立つ社員のことです。役に立つ社員とは、何か自分のものを持っている社員のことです。

誠心誠意はたらきなさい。ミミッチイ考えを起こしなさんな。給料分だけはたらけばいいだろう、なんて薄ぎたない根性をお持ちになったらオシマイだよ。

つぎに、こんなこともいいたいね。自分の会社の悪口は金輪際いうな。どんなことがあろうと、クチがくさっても悪口をいうな。同僚のワルクチ、上役のワルクチを外部に向かっていうな。

なぜでしょう。いったら損だからです。そんなツマラナイ会社に勤めていると思われたら、その人がバカにみえるからです。くだらない上役につかえているなどといえば、あなたがバカに見えますよ。

新入社員よ、勇敢に発言しなさい。たたきなさい。たたかれなさい。それが勉強です。会社のタメです。自分のためです。

新入社員よ、ボヤキなさんなよ。ブウブウいうなよ。キミタチは新人なんだよ。一所懸命やれよ。勉強しなさいよ。勉強といってもいろんな勉強があるんだよ。それを知るのが勉強なんだ。

新入社員よ、どんなことがあろうと、どんな変な会社にはいっても、どんなポストにつこうと、どんなに意地の悪い上役の下につこうと、最低三年間は辛抱しなさい。なぜか。

新入社員を一人いれるために、会社はどれだけの費用をつかっているか。どれだけの神経をつかっているか。それも考えてください。それを考えれば三年間の辛抱はできるはずです。

三年間辛抱して、どうしてもイヤならやめなさい。しかし三年間は誠心誠意つくしなさい。それが「義理」というものです。三年間の辛抱は決してムダにはなりません。私は、そう断言する自信を持っています。

(山口瞳『新入社員諸君!』より)

今週の「読んで書いた本」 2011.04.01

2011年04月01日 | 書評した本たち

計画停電の影響が少なかった今週、「読んで(書評を)書いた」のは
次のような本たちです。


桐野夏生 
『ポリティコン』 上・下 文藝春秋  

養老孟司 
『養老孟司の大言論Ⅰ 希望とは自分が変わること』 新潮社 

川北義則 
『「自分の人生、これでいいのか」と思ったとき』 祥伝社

安野 光雅・半藤 一利・中村 愿 
『「史記」と日本人』 平凡社

丸山健二 
『さもなければ夕焼けがこんなに美しいはずはない』 求龍堂

原 京一
『原 京一写真集 蒸気機関車の記憶』草思社

近藤誠一 
『外交官のア・ラ・カルト』 かまくら春秋社  

須藤桂一 
『「歩くだけ」ダイエット』 講談社 


・・・・桐野夏生さんの『ポリティコン』が、読後しばらくしてから、じわじわと毒が回るように(笑)効いてくるような気がします。

中学生の頃、まだ故郷の信州で見ることができた機関車を撮影して歩いていた“元プチ撮り鉄”なので、原京一さんの写真集は見ていて飽きません。


* 上記の本の書評は、発売中の『週刊新潮』最新号(4月7日号)に
  掲載されています。