4月1日です。
新社会人の皆さん、おめでとう!
中には、このご時世で、入社式も行われない会社もあるでしょう。
でも、とにかく今日から新社会人です。新入社員です。
やはり、「おめでとう!」です。
この国が大変な時に就職活動を続け、大変な春に社会に出たわけですが、そんな状況なんぞに負けず、元気にスタートを切ってください。
毎年4月1日は、新社会人・新入社員の皆さんに、この本を、この文章を紹介することに決めています。
山口瞳さんの名著『新入社員諸君!』(角川書店)。

写真の文庫本は、私が社会人になった春に購入した昭和53(1978)年版です。
書かれたのはだいぶ前で、本もよれよれですが、今もときどき読み返します。
時間が経とうと、時代が変わろうと、変わらない真理みたいなものが、ここにはあるからです。
ぜひ、ご一読ください。
以下は抜粋なので、興味をもったら、この本を探して全文を読んでみることをおススメします。
まず、会社へはいったら、学校とちがっていろんな人間がいることを知っておいてください。
立身出世の本やマネージメントの書物を読むこともムダではありませんが、まず同僚・上役と仲良くすることが先決です。これは決して妥協でもイヤラシイことでもありません。人間と人間のおつきあいということです。
つぎに申し上げたいことは、一所懸命にはたらきなさいということです。
誠心誠意ではたらき有能な社員になってください。有能な社員とは、役に立つ社員のことです。役に立つ社員とは、何か自分のものを持っている社員のことです。
誠心誠意はたらきなさい。ミミッチイ考えを起こしなさんな。給料分だけはたらけばいいだろう、なんて薄ぎたない根性をお持ちになったらオシマイだよ。
つぎに、こんなこともいいたいね。自分の会社の悪口は金輪際いうな。どんなことがあろうと、クチがくさっても悪口をいうな。同僚のワルクチ、上役のワルクチを外部に向かっていうな。
なぜでしょう。いったら損だからです。そんなツマラナイ会社に勤めていると思われたら、その人がバカにみえるからです。くだらない上役につかえているなどといえば、あなたがバカに見えますよ。
新入社員よ、勇敢に発言しなさい。たたきなさい。たたかれなさい。それが勉強です。会社のタメです。自分のためです。
新入社員よ、ボヤキなさんなよ。ブウブウいうなよ。キミタチは新人なんだよ。一所懸命やれよ。勉強しなさいよ。勉強といってもいろんな勉強があるんだよ。それを知るのが勉強なんだ。
新入社員よ、どんなことがあろうと、どんな変な会社にはいっても、どんなポストにつこうと、どんなに意地の悪い上役の下につこうと、最低三年間は辛抱しなさい。なぜか。
新入社員を一人いれるために、会社はどれだけの費用をつかっているか。どれだけの神経をつかっているか。それも考えてください。それを考えれば三年間の辛抱はできるはずです。
三年間辛抱して、どうしてもイヤならやめなさい。しかし三年間は誠心誠意つくしなさい。それが「義理」というものです。三年間の辛抱は決してムダにはなりません。私は、そう断言する自信を持っています。
(山口瞳『新入社員諸君!』より)