碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

NHK朝ドラ『おひさま』と信州・安曇野

2011年04月07日 | 「東京新聞」に連載したコラム

「東京新聞」での連載コラムが始まった。

テレビ・芸能ページにある「言いたい放談」。

日替わりでさまざまな方々の文章が並ぶが、隔週の水曜日、私のものは、やはりテレビのことが中心となるはずだ。

6日の第1回目では、今週スタートしたNHKの朝ドラ「おひさま」を題材に書かせていただいた。

久しぶりで、少女期から老年期までの、女性の一代記になっている。

そして、その舞台が信州・安曇野だ・・・・



「おひさま」に寄せる期待


NHKの連続テレビ小説『おひさま』が始まった。舞台は信州の安曇野、そして松本市だ。

松本の高校を卒業するまで信州で過ごした私にとって、嬉しいような、面映ゆいような、ちょっと不思議な気分だ。

実はもともと、地名としての「安曇野」は存在しなかった。

松本から大町にかけての田園地帯は古来「安曇平(あずみだいら)」と呼ばれていたのだ。

安曇野という言葉が広まったのは、一九六五年に臼井吉見さんの大河小説『安曇野』が出版されてからである。

新宿中村屋を興した相馬愛蔵・黒光夫妻、彫刻家の荻原碌山など、この地を“ふるさと”とする五人の仲間たちを通して、明治から昭和に至る激動の時代が描かれていた。

六九年には相馬黒光をヒロインにした『パンとあこがれ』というドラマも制作されている。

TBSがまだ朝ドラを放送していた時代、ポーラテレビ小説の枠だ。脚本が山田太一、黒光役は新人の宇都宮雅代だった。

これから半年、『おひさま』は私たちにどんな“ふるさと”の姿を、主演の井上真央はどんな女性像を見せてくれるのか、とても楽しみだ。

しかし一方で、被災地の皆さんが今、目にしている風景を思うと胸が痛い。

島崎藤村のいう「血につながるふるさと 心につながるふるさと 言葉につながるふるさと」の、一日も早い復興を願っています。

(東京新聞 2011.04.06)