恩師である浜光雄(児童文学者・はまみつを)先生が亡くなったのは
2月22日のことだ。
もうすぐ2ヶ月になる。
今も、ふとした瞬間に、先生のことを思う。
一番多いのは、書いた原稿が活字になった時だ。
「先生が読んだら、何て言うだろう」と、その顔を思い浮かべる。
年に2回の“報告・飲み会”に、半年の間に書いたものを持参するのが習慣だった。
いつも先生は、「ほほ~」と声をあげ、それらに目を通してくれた。
感想や意見など訊く必要はなかった。
先生の「ほほ~」のトーンで、文章の出来、不出来が嫌でもわかる(笑)。
これ以上の修業はない。
つい先日も、「ああ、先生に会いたいなあ」と思っていたら、先生の娘さんである、浜このみさん(クッキングコーディネーターとして活躍中)から小包が届いた。
開けてみたら、先生の遺作『山と民の話 信州むかし語り2』(しなのき書房)だった。
亡くなる前の数カ月、入院先でも執筆を続けていた本だ。
「あとがき」まで、しっかり書き上げ、そして逝った先生。
見事だった。
和田春奈さんによる本の表紙の切り絵が、どこか先生の風貌に似ていて、嬉しい。
「先生、お久しぶりです」と、声をかけたくなった。
ことばをのこすのは至難なことである。
が、さらに難しいのは、
そのことばが人びとの心にのこっていくことだろう。
心にやさしさをもつものは、孤独のいたみもふかい。
――はまみつを 『山と民の話』