碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「黄昏流星群」の黒木瞳は悪くない

2012年07月04日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。

今回は、黒木瞳主演のドラマSP「黄昏流星群」を取り上げました。


設定に無理があったけど
ピアニスト役の黒木瞳はよかった

先週、「恋する大人のドラマスペシャル 黄昏流星群~星降るホテル~」(フジテレビ)が放送された。原作は弘兼憲史の人気劇画だ。

今回ドラマ化された物語は至ってシンプル。ベンチャー企業家(高橋克典)が病に倒れ、10年分の記憶を失くす。困り果てた妻(石田ひかり)が頼ったのは、夫のかつての恋人(黒木瞳)だった。

高橋の記憶を取り戻すために、黒木が妻、石田が家政婦を演じる。高橋に対して、複雑な思いの黒木。役割と納得しながらも、黒木に嫉妬する石田。最後はもちろん黒木が“愛の奇跡”を起こす。

ツッコミどころが満載であることは、見る前から分かっていた。この年代の恋愛物といえば黒木というのが安易だし、黒木と高橋の組み合わせは一昨年の連ドラ「同窓会~ラブ・アゲイン症候群」(テレビ朝日)のまんまだ。さらに、妻とかつての恋人が入れ替わる設定も実際にはかなり無理がある。

ところが、このドラマの黒木瞳は悪くない。NHK「ママさんバレーでつかまえて」「下流の宴」など主婦を演じるとウソっぽいのだが、今回の「独身の美人ピアニスト」みたいな現実感の薄い役柄はぴったり。「大人のいい女」になり切って、このファンタジーを支えていた。

そして、もうひとり、黒木を慕う心療内科医役の片岡愛之助にも注目。普通の役者とはどこか違うたたずまいが印象的だ。

(日刊ゲンダイ 2012.07.03)

今週の「読んで(書評を)書いた本」 2012.07.04

2012年07月04日 | 書評した本たち

タイトルに魅かれて、宮田珠己『はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある』(本の雑誌社)

中野美代子『奇景の図像学』、ミシェル・レリス『幻のアフリカ』、菊池俊彦『オホーツクの古代史』など、「そんな世界があったのか、とエキゾチックな嗜好を満たしてくれる本」ばかりを紹介していて壮観だ。

本好きを自任する人の潜在意識を刺激する、異色のブックエッセイです。


さて、今週の「読んで(書評を)書いた本」は、以下の通り。
 
大石英司 
『尖閣喪失』 中央公論新社

笹本恒子 
お待ちになって、元帥閣下』 毎日新聞社

藤井 聡 
『プラグマティズムの作法』 技術評論社

* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(7月5日号)
  に掲載されています。