碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「難病」と「子役」を駆使した不幸物語「ビューティフルレイン」

2012年07月02日 | テレビ・ラジオ・メディア

フジテレビ「ビューティフルレイン」の第1回を見た。

うーん、これはどうなんだろう。この後味の悪さは。

「難病と子役を駆使した不幸物語」と言わざるを得ない。

妻と死別し、まだ7歳の娘(芦田愛菜)を抱えた男(豊川悦司)が、若年性アルツハイマー病と診断される。

しかも医師は、症状の初期から後期までの説明をした後、「有効な薬はないんです」と宣告。

また、「最後は自分が誰であるかも分からなくなります」という言葉も、(正確なのかどうかはともかく)ずいぶんデリカシーに欠ける。

ドラマの都合で、衝撃的なシーンにしたのだろうが、これじゃあ、救いがない。なさ過ぎる。

この第1回目の時点が、この父娘にとっては、いわば“幸福の頂点”だと言える。

後はこれからの3ヶ月、視聴者は“他人の不幸”を、それも“地滑り的に度を増していく不幸”を見せられることになるのだ。

もちろんフィクション、もちろんドラマである。

とはいえ、若年性アルツハイマー病はリアルな病気だ。

この病気を抱えている患者さん、その家族も相当な数になるだろう。

その方たちがこのドラマを見たら、どんなふうに感じることか。

“泣かせるドラマ”にするために、リアルな病気を使って、登場人物たちの運命を、こんなふうに安易に弄ぶのは悪趣味だ。

少なくとも私は、毎週日曜の夜に、このあざとい“地滑り的不幸”のプロセスを見たいとは思いません。