碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

「リッチマン、プアウーマン」のコメディエンヌ・石原さとみ

2012年07月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

今週は、フジテレビの月9「リッチマン、プアウーマン」を取り上げました。

御祝儀相場の初回視聴率13.9%、実質参加の視聴者が集まる2回目で11.3%と下がり、今週の第3話が13.1%とアップ。

制作側は、ほっとしているんじゃないかな。

見ている高校生~大学生は、それなりに面白がっているようなので(笑)、しばらくは、これくらいで推移するはずです。


コメディエンヌ・石原さとみの熟成度に注目

現在の大学4年生の就職活動が始まったのは昨年12月。あれから8ヶ月が過ぎて、学生は3つのタイプに分かれてきた。すでに就職先を決めた者、内定は得ているが就活継続中の者、そしてまだ内定が出ていない者だ。

フジテレビ月9ドラマ「リッチマン、プアウーマン」のヒロイン(石原さとみ)は東大理学部生ながら3番目のタイプ。IT企業のカリスマ社長(小栗旬)と出会い、運命が開け始めたところだ。

このドラマにはいくつかの側面がある。資産250億円の富豪青年と女子学生の恋愛ドラマ。慢性的就職氷河期を生きる学生の就活ドラマ。また小栗が率いるITベンチャーをめぐる企業ドラマでもある。

しかし、何と言っても見るべきものは、コメディエンヌ・石原さとみの熟成度だ。

2年前の「霊能力者 小田霧響子の嘘」(テレビ朝日)で見せた“ふっ切れキャラ”に、更なる磨きがかかってきている。特に、追いつめられた“未内定”就活生の焦り、不安、憤りを体現したシーンなど絶品。

実際、面接で落とされまくり、自分の存在自体を否定されたように感じてしまう就活生は多い。来年春からの「居場所」を必死で探す石原の悲惨と滑稽には、十分なリアル感があるのだ。

今後、物語は石原の素性の謎を交えながら進行していく。“魅惑のくちびる”は何を明かすのか。

(日刊ゲンダイ 2012.07.24)

テレ朝「視聴率3冠王」についてコメントした記事全文

2012年07月25日 | メディアでのコメント・論評
(7月24日は伝説の女性飛行士アメリア・エアハートの誕生日)


先日、テレ朝の視聴率「3冠王」についてコメントした読売新聞の記事が、ようやく全文アップされました。

転載しておきます。


テレ朝が視聴率「3冠王」…4~6月、関東地区
人気番組を効果的に編成


テレビ朝日が好調だ。ビデオリサーチ社の調べによる、4~6月の四半期の関東地区の平均世帯視聴率が、三つの時間帯でトップに立つ「3冠王」となった。

これは1959年2月の開局以来初の快挙だ。人気のある番組を効果的に編成したことが、今回の躍進の原動力となったようだ。

テレビ朝日の4~6月の視聴率は、全日(午前6時~深夜0時)7・9%、ゴールデンタイム(午後7時~10時)12・3%、プライムタイム(同7時~11時)12・7%と、他の在京局を上回った。

同局は在京局としては後発。視聴率競争では苦戦が続き、在京民放5局中4位が指定席という時期が長かった。ただ、ここ数年好調で、年間視聴率では在京民放中3位に上がっていた。そして、4月以降、一躍NHKも含む在京局中トップに躍り出たのだ。

全日での成功は、夕方の時間帯で、水谷豊主演の人気ドラマ「相棒」を再放送し、続いて始まる5~6時台のニュース番組「スーパーJチャンネル」に、視聴者を引き込む流れを作ったことにある。「相棒」の再放送は、夕方の時間帯としては高く、10%台を稼ぐこともある。

夜の時間帯では、午後7時、または8時から、バラエティー番組の2~3時間にわたる特番を頻繁に編成。続く午後9時54分から放送されるニュース番組「報道ステーション」につなげる。この時間帯唯一のニュースである同番組が、平均14%台という好調を維持している。

また、6月には、サッカーW杯最終予選の3試合を放送し、いずれも30%を超える高視聴率を獲得したことも大きかった。

編成が巧みでも、番組内容が貧弱では、数字につながらない。碓井広義・上智大教授(メディア論)は「最もテレビを見ている中高年層向けに、質の高い番組を作っているのが勝因」と見る。

連続ドラマでは、「相棒」に代表される、落ち着いた内容の刑事ドラマが多い。人気が出たら、シリーズ化できるような作りを施し、そうして定着したシリーズものが、じっくり見たいシニア世代に受け入れられている。

一方、バラエティーでは、10年近く続く長寿番組が目立つ。そんな中、「Qさま!!」「アメトーーク!」などが、10%以上を稼いでいる。碓井教授は「視聴者の好みを考えながら、各ジャンルでじっくり番組を育ててきた成果が表れている」と指摘する。


ただ、こうした編成方針は、広告収入では必ずしも有利ではない。フジテレビの豊田皓社長は定例記者会見で、「高齢世代に合わせるだけではスポンサーはつかない。我々はこれまで通り、10代や若い女性向けの番組を作る」と、冷静に受け止めている。

実際、4~6月の各時間帯で2位局との差は、いずれも1%前後の僅差。テレビ朝日の早河洋社長は「楽観視はしていない。我々はあくまでチャレンジャー」と気を引き締めていた。(浅川貴道)

(2012年7月24日 読売新聞)