染織工房きはだや 「店主の独り言」

きはだや店主が今日の出来事を語る。喚く。話す。切る。
でも日記は苦手。
皆様の気軽なコメントをお待ちしています。

もう一つの建物~歌舞伎座

2015年01月12日 | 店主の一日
ふと考えると、東京中央郵便局と同じ道を辿った建物が都内にはまだあります。
銀座にある「歌舞伎座」です。


松竹からしたら興行に左右される現在の歌舞伎座よりも安定した賃貸収入をもたらすオフィスビルの方が多分、いいに決まっています。
こっちの方は郵便局ほどの反対騒ぎがあった記憶はないのですが、きはだやのお客様には今の歌舞伎座を嘆く人も少なくありません。
~これまた内部の構造には全く明るくないのですが~
「二階のどこそこには変な場所に柱があって、ちょっと見えにくかった」
「階段を上がっていくのが高揚感を伴って楽しかった」

バリアフリーもどこから見ても見え易い劇場に文句を言う人はいないのかもしれませんが、全てがオールオッケーみたいなのも何だか物足りない気がします。
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東京中央郵便局考。 新しい建物は古い建物を越えるのか?

2015年01月12日 | 店主の一日
丸の内に来ると、どんどんと建物が高くなって行く事に驚きます。
丸ビルを建替えたのを筆頭に周辺にあるビルが次々高くなり、今も所々に「再開発」を予定する看板が見えます。
最開発の中、唯一元の形を維持したのが東京駅です。
そしてもう一つが東京駅に並んで建つ「東京中央郵便局」です。
しかしながらこの建物も維持してあるのは正面だけで、正面と一体化する形で背後に38階のビルが建っています。


僕は建築には全くの門外漢なのですが、旧東京中央郵便局はドイツ人建築家のブルーノ・タウトが絶賛したとされる構造、デザインで再開発で解体の際には当時の所轄大臣を巻き込んでの大騒ぎになった経緯があります。
文化的価値の高い建物の解体に学界をはじめ多くの反対がありましたが、民営化され家賃収入を目論んだ日本郵政株式会社は躯体を残し外観を再生する恰好で現在の形での再開発となりました。
東京駅から徒歩一分の超一等地を文化的価値を優先して5層の建物を維持しろと言われても、民間会社としたら中々大変なことです。

~でもよくよく考えたら、元々税金なんだから、どうなんだって気もしますが~


丸の内に来るとすっかり高くなった周辺のガラス張りのビルに対してタイル張りで中央に時計を構える建物は実に堂々としています。
それだけにその背後に聳えるJPタワーはなんとなく違和感を感じます。
でも、多分今の東京中央郵便局は外観をそのままにして熱効率や照明は現在の技術を集めたハイテクなものになっているのでしょう。
勿論、コンクリート等の素材の質も昔よりもずっとよくなっているのだと思います。
そうすると残す価値のあるべきものは外観のデザインのみと云う事になりそうな気がします。
あるいは正面のデザインのみが残っているだけのものを残す必要があるのかとも思います。
僕は「もう作る事ができない」「もう作ろうとしても材料が手に入らない」といったものにこそ残す価値がるのだと思っていましたが、
郵便局を考えるに於いては違うのかもしれません。
その辺りが素人と学者の違いであるのかもしれません。

中越地震の時に十日町は大きな被害がでました。その際に土蔵が大きく損傷して解体を余儀なくされました。
壁を壊していた時に見たのは、格子状にした縄を梁に渡して、そこに何層にも土を重ね作ってある壁でした。
今の様に柱にパネルを打ち付ければ出来上がるようなものでは全くありません。
もうこの壁を再現する事はできないであろうと云う感慨と、同時に周辺にあるもので耐火性のある建物を作って行く先人の手間と知恵に驚きました。
今、土蔵の様な耐火性のある物置を作ろうとしたら鉄筋コンクリートに除湿器でも入れたらいいと云う話になるのかもしれませんが、それと土蔵の持つ存在感とは随分、違う気がします。
失われて行くものへのノスタルジアと云えばそれまでですが、失われた後にそのイメージだけ残した中央郵便局は矢張り惜しかったように思うのです。
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