2016年06月09日
モスクワ発
[外国人が実質管理する漁業を強制的に停止させる規則をロシア政府が承認]
ロシア政府は2016年6月3日付No.502により、外国人資本により不正に行われる漁業、その水棲生物資源の漁獲割当を強制的に停止させる規則を承認した。
規則には許可証の登録、発給から、その取り消しに関する事項が盛り込まれている。
これまで、韓国企業が極東のロシア漁業会社を実質管理し、ロシア排他的経済水域におけるスケトウダラ漁獲割当を年間約20万トン確保してきた合弁(ロシアフラッグ/韓国内国貨物扱)操業について違法性が指摘されてきた。
2000年代前半に始まった、このいわゆる”灰色操業”について、2014年7月、ロシア漁業庁は、”国防・安全保障戦略産業に対する外国人投資手続法”(外国人投資法)の一部改正が発効した段階で、漁獲割当が没収される等、厳しい対応がとられる可能性がある旨を韓国漁業分野代表に対して通報した。
一方、2015年11月6日、国会のヒアリングにおいて、ロシア漁業庁副長官ヤナ・バグロワは、外国人投資によるロシア漁業を停止させるための法令が整備されていないと語り、水棲生物資源の漁獲に関する外国人投資を規制する法令はあるものの、それを強制的に終了させるための法令が用意されておらず、これを継続することが可能な現状にあると指摘していた。
2015年11月9日、ロシア大統領プーチンは、同年10月19日、モスクワにおいて開催された漁業分野発展のための国家評議会幹部会合の結果に基づき、ロシアの外国人投資を監視するための政府委員会の決定を受けずに行われている外国資本漁業を停止することを盛り込んだ命令リストを承認し、首相メドヴェージェフがロシア漁業庁に対して来年2016年1月28日以前に全ての手続きを完了するよう命令した経緯にある。
2014年04月20日 北海道新聞
[経済成長背景に資源囲い込み ロシア、標的は世界市場(2)]
道民にもなじみの深いスケソウダラ。米国に本拠を置くマクドナルドがハンバーガー「フィレオフィッシュ」のフライに採用するなど、世界各国で広く食べられている。
世界のスケソウダラの年間生産量約330万トンのうち、極東水域は200万トンを占める。それだけに、この資源をめぐる争いは熾烈(しれつ)だ。
韓国にも調査着手
鍋料理の具材として需要のある韓国。年間消費量26万トンの90%前後を韓ロ合弁会社の漁獲に依存し、韓国政府も輸入関税25%を免除して保護してきた。
しかし、香港のパシフィックアンデス(PA)社を排除したのと同様に、ロシア独占禁止庁は2013年夏、韓国の漁業会社14社に対しても「韓ロ合弁20社を違法に支配している」との疑いで調査に着手。今後、関税免除が見直される可能性がある。
香港や韓国の資本がロシアの漁業会社の経営に関与したのは、01年から3年間行われたスケソウダラなどの漁獲枠入札制がきっかけだった。応札資金が不足する漁業会社に、豊富な資金を貸し付け、傘下に収めてきた。
「ロシアの漁業会社はもう、韓国や中国の資金を必要としなくなった」。一連の外資排除の動きについて、釜慶(プギョン)大学教授の張瑛秀(チャンヨンス)(49)は、こう解説する。石油や天然ガスの資源マネーをてこにした、ロシアの経済成長がその背景にある。
資源を囲い込むロシアの次の標的は世界市場だ。
ロシア極東の46社が加盟するスケソウダラ漁業者協会(ウラジオストク)は昨年9月、オホーツク海のスケソウダラ漁業を「持続可能で環境に配慮した漁業」と認める海洋管理協議会(MSC、本部・ロンドン)の国際認証を取得。これを取引条件としている世界最大手の米小売りウォルマートや、EU、米国、ロシアの各マクドナルドなどへ売り込みが可能になった。
米団体警戒隠さず
米国マクドナルド社などへ供給している米国のスケソウダラ漁業者団体APA(シアトル)広報部長のジム・ギルモア(59)は、「われわれの製品は、消費者に圧倒的な信頼を得ている」と自信を示すが、「ロシアが品質を上げて入ってくれば状況は変わるだろう」と警戒する。
こうしたスケソウダラをめぐる勢力図の変化に、道内漁業者も注目している。
スケソウダラを漁獲する北転船、沖底船の業界団体・道機船漁協連合会常務の原口聖二(49)は「韓国政府の韓ロ合弁会社に対する免税措置が撤廃されれば、韓国へ輸出する北海道産の生鮮スケソウダラの競争力は高まり、沿岸漁業者にも恩恵は及ぶ」と期待する。
極東の水産資源をめぐる争いの波が今、ロシアから周辺国へ押し寄せつつある。=敬称略=