2018年05月27日
北海道新聞(モスクワ共同)
[日ロ首脳会談発表要旨]
安倍晋三首相とプーチン・ロシア大統領の会談と共同記者発表の要旨は次の通り。
【北朝鮮対応】
首相 日朝平壌宣言にのっとり、核・ミサイル・拉致問題を包括的に解決し、北朝鮮との国交正常化を目指す。こうしたわが国の一貫した立場をプーチン氏は理解してくれたと思う。北朝鮮の非核化を進めるのは日ロ共通の立場だ。
プーチン氏 全ての当事者が新しい対立に入らないよう努力しなければならない。政治的、外交的手段でやらなければならない。
両首脳 北朝鮮の非核化へ緊密連携を確認。米朝首脳会談成功の後押しで一致。
【平和条約締結】
プーチン氏 双方が受け入れ可能な解決策への模索を、忍耐強く継続しなければならない。
首相 着実に前進する決意を2人で新たにした。私たちの世代でこの問題に終止符を打ちたい。
【共同経済活動】
プーチン氏 海産物養殖、温室栽培など5項目のこれまで行われた作業について満足だ。
両首脳 具体化に向けた作業加速で一致。事業化に向け7、8月をめどに民間調査団を派遣することで合意。
【対ロ経済協力】
首相 医療や都市開発、エネルギーなど国民の生活に役立つ協力が進んでいる。デジタル経済や労働生産性向上に向けた協力も本格的に始める。
【墓参】
両首脳 北方領土の元島民らによる4島への空路墓参を7月にも実施することで一致。
【安全保障】
両首脳 外務・防衛閣僚協議(2プラス2)の2018年後半の開催で一致。
【日ロ関係】
9月にロシア極東ウラジオストクで開かれる東方経済フォーラムでの首脳会談開催を確認。
2018年05月27日
毎日新聞【モスクワ大前仁、小山由宇】
[日露首脳会談「領土」進展遠く 共同経済活動、主権が壁]
安倍晋三首相は26日午後(日本時間同日深夜)、ロシアのプーチン大統領とモスクワのクレムリン(大統領府)で会談した。北方領土での共同経済活動を具体化し、領土問題の進展につなげたい考えだ。だが、活動の前提となる日露双方の法的立場を害さない「特別な制度」導入については協議が難航した模様だ。
会談冒頭、プーチン氏は「最も大切なのは、お互いの関係発展に関心を持つことだ」と呼びかけた。首相は「(2016年12月、山口県の)長門での会談から共同経済活動、(北方領土の)元島民の人道的措置について具体的進展が見られた。この会談でさらに弾みをつけたい」と応じた。
首相がプーチン氏と会談するのは通算21回目。個人的な信頼関係をテコに、プーチン氏が領土問題の解決に向けかじを切ることを期待してきた。特に今年3月のロシアの大統領選で通算4選を果たした後、領土問題で政治決断を下しやすい環境が生まれるとの分析が日本政府内にあった。だが、変化の兆しは見えず、政府関係者からは「前のめりになりすぎた。ロシアの温度を読み間違えた」との声が漏れる。
会談では、共同経済活動のうち、ウニの養殖やイチゴの温室栽培などで具体化に向けた協議に入ることを確認する見通し。しかし、「特別な制度」を導入せず、ロシアの主権下で共同経済活動を始めれば、国際社会から「日本は北方領土のロシア支配を認めた」と評価されかねない。
会談では、北朝鮮情勢についても意見交換。外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を年内に開催し、安保対話を進めることでも合意する方向だ。北朝鮮情勢や中国の軍拡を念頭に、日露関係が緊張し、日本を取り巻く安保環境がさらに悪化することを防ぐ狙いがある。
孤立の露、日本に接近
「我々は相互に受け入れ可能な譲歩を見つけられるよう試みていく」。プーチン露大統領は25日に外国通信社代表団との会見で、平和条約締結の見通しを尋ねられると、前向きなトーンで切り出した。ただし、このような発言が平和条約交渉の加速化につながる可能性は、それほど高くない。
会見でプーチン氏は、かつて日本が「日ソ共同宣言」(1956年)に盛り込まれた2島返還の解決策を拒んだことから暗礁に乗り上げた、という持論を繰り返した。具体的な解決策についても「どのようになるのかは現時点で述べられない。それを話せるのならば、もう(平和条約に)署名しているだろう」と語った。
通算4期目の政権を発足させたプーチン氏が日本との関係を重視する構えを見せる背景には、米露関係が悪化している事情を踏まえ、西側諸国の結束を揺さぶろうとの意図があるとみられる。また、日本との経済関係を拡大し、大型投資を呼び込む狙いもある模様だ。ロシア大統領府が出した首脳会談の資料には「日露間で大型投資を含めた協力を拡大させたい」とあるが、米国がロシアに対する経済制裁を強化する中、日本政府が受け入れるのは容易ではない。日本側は医療協力など米国の反発を買わない小規模のプロジェクトを念頭に置いている。
2018年05月27日
日本経済新聞【モスクワ=田島如生】
[日ロが首脳会談、北朝鮮問題を協議 イラン核合意支持]
安倍晋三首相は26日午後(日本時間同日夜)、モスクワのクレムリン(大統領府)でプーチン大統領と会談した。トランプ米大統領がいったん中止を発表した後、開催に言及する米朝首脳会談の行方など北朝鮮問題を話し合う。米国が離脱を表明したイラン核合意の支持で一致する見通しだ。
首相は冒頭、2016年12月の日ロ首脳会談に触れ「平和条約問題を解決するとの真摯な決意を共に表明した。この会談によってさらに弾みをつけたい」と強調。プーチン氏は「主に2国間関係について意見交換したい。政治分野の協力も意見交換したい」と語った。
首相は米朝会談を開くには核・ミサイル問題や拉致問題の前進が必要との立場。一方、プーチン氏は米国に対話に応じるよう呼びかけている。南北両首脳が26日に開いた2回目の首脳会談についても話し合うもようだ。
北朝鮮問題を巡っては完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)を求める日本と、段階的な非核化が好ましいとするロシアには隔たりがある。非核化の時期や手法が焦点だ。
中東情勢に関しては米英独仏中ロの6カ国とイランが2015年に結んだ核合意が論点。日ロは合意を支持する立場で足並みをそろえるが、日本が米国の立場に理解を示すのに対し、ロシアは対米批判を続けている。
安全保障協力は17年3月以来となる日ロ外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を年内にロシアで開くと一致する。経済分野は、8項目にわたる協力プランや労働生産性の向上に関する成果文書をそれぞれ交わす予定。経済協力プランはロシア極東での医療や都市づくりがあり、事業数は既に130件を超えた。
北方領土での共同経済活動も主要議題の一つ。両政府が優先的に進めようとしている5項目のうち、ウニの養殖やイチゴの温室栽培の事業化を合意する。こうした事業を手がける企業などでつくる調査団を今夏にも北方四島に派遣し、事業の詳細や場所を詰める。
2018年05月26日
朝日新聞(モスクワ=小野甲太郎)
[安倍首相、北方四島「共同経済活動」言及 日ロ首脳会談]
モスクワを訪問している安倍晋三首相は26日午後、クレムリンでロシアのプーチン大統領と会談した。
冒頭、首相は北方四島での「共同経済活動」に言及。「共同経済活動、元島民への人道的措置について、この会談でさらに、弾みをつけたい」と呼びかけた。プーチン氏は「政治分野の協力に関して意見交換したい」と述べた。
両首脳の会談は、第1次安倍政権から通算して21回目。共同経済活動は2016年の首脳会談での合意後、海産物養殖や温室野菜栽培など優先的に取り組む5分野を定め、日本から官民調査団を派遣して事業の選定を進めてきた。だが、両国が北方領土での主権を主張する中、ロシアの法律とは異なる「特別な制度」の策定は滞っている。
両首脳は今回の会談で事業の進捗(しんちょく)を確認。安倍首相は元島民への人道的措置について、昨年始まった航空機による墓参の継続と、船による墓参の際の出入域手続きの場所の増設を求める。北方四島以外で進める「8項目の経済協力プラン」の成果と今後の取り組みも確認する。安倍首相は、一連の経済協力を北方領土交渉の進展につなげ、平和条約締結を実現したい考えだ。
北朝鮮問題についても、今後の対応などを協議する。両首脳は北朝鮮の非核化を目指すことでは一致している。だが、安倍首相が「完全で検証可能、かつ不可逆的な非核化」が実現するまで圧力を維持する方針を掲げているのに対し、プーチン氏は対話の必要性も指摘しており、どこまで隔たりを埋められるかが課題となる。
2018年05月26日
日本経済新聞【サンクトペテルブルク=小川知世】
[安倍首相、日ロ経済協力拡大に意欲]
ロシアを訪問中の安倍晋三首相は25日夜(日本時間26日未明)、同国のプーチン大統領と日ロ企業の経営幹部との会合に出席し、日ロ間の経済協力の拡大に意欲を表明した。企業間の連携が「両国民の生活に大きな恩恵をもたらす」と意義を強調し、日ロ平和条約締結に向けた信頼関係づくりにつながると訴えた。
首相は日ロ政府が2016年5月の首脳会談で合意した「8項目の経済協力プラン」で、日ロ企業が130を超える合意を結び、半数が動き出していると進捗を紹介した。ロシアと法的な枠組みづくりや融資制度の拡大などに取り組み、「潜在力を開花させたい」と企業に協力を呼びかけた。
日本の技術を生かした事業分野として極東での医療や都市づくりを例示。プーチン政権が掲げるデジタル経済の発展で日ロ企業が連携すれば両国が「トップランナーになれる」と力を込めた。
プーチン氏は日本の投資や日ロ間の貿易高が中国に比べて少ないと指摘し「数倍に拡大する可能性がある」と投資環境の整備に意欲を示した。
会合はサンクトペテルブルクでロシアが主催する国際経済フォーラムで開かれた。企業からは丸紅の朝田照男会長らが参加し、ロシア企業との共同事業などを紹介した。ロシア側は国営原子力企業ロスアトムなどのトップが登壇し、日本企業に投資を呼びかけた。
ロシアでは欧米による経済制裁が続き、外国企業による投資や技術流入の停滞が懸念されている。4月には米国が日本企業とも取引があるアルミ大手ルサールなどを対象に米国内での取引を禁じる厳しい制裁を発表し、リスクが改めて浮き彫りになった。