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カラフトシシャモ 食卓から消える? 北欧で漁獲見送り、ロシア極東に買い付け殺到 秋以降は高値か 【ユジノサハリンスク細川伸哉】

2019-06-10 07:42:54 | 日記

カラフトシシャモ 食卓から消える? 北欧で漁獲見送り、ロシア極東に買い付け殺到 秋以降は高値か

サハリン西海岸に水揚げされるカラフトシシャモ=5月13日(細川伸哉撮影)
サハリン西海岸に水揚げされるカラフトシシャモ=5月13日(細川伸哉撮影)

 【ユジノサハリンスク細川伸哉】「子持ちシシャモ」などとしておなじみのカラフトシシャモが、食卓や居酒屋から遠ざかる可能性が強まっている。輸入先の9割を占める北欧産の今季の漁獲が資源不足で見送られ、当面、品薄が避けられない見通しだからだ。新たな供給先として、サハリン島などロシア極東に、日本の水産関係者が買い付けに殺到している。

 「予想していなかった非常事態。このままでは居酒屋やコンビニから庶民の味覚が消えてしまう」。関東地方でカラフトシシャモの加工を手掛ける水産加工業者は危機感を募らせる。

 カラフトシシャモは、胆振管内むかわ町産などのブランドで知られる高級な道産シシャモの代替品として全国で流通し、干物10匹で通常200~400円ほどの価格で販売されている。ほぼ全量が輸入で、貿易統計によると2018年は約2万2千トンを輸入した。

 このうち9割はアイスランドとノルウェー産。漁期は例年2~3月だが、水産関係者によると今年は資源不足で漁が行われなかった。国内に約15社あるカラフトシシャモ加工業者への「北欧からの今年の輸入は皆無だった」(水産商社)。

 加工業者によると、各社が抱える在庫は1年分程度で、「消費者離れを懸念して業界は値上げを様子見しているが、品薄感が強まる秋以降は2~3割ほど高くなるだろう。その後は来年の漁次第だ」と分析する。

 こうした事態を受け今春以降、輸入先の「未開拓地」だったというロシアのサハリンやハバロフスク地方などに、日本の水産加工、商社の数十人が相次いで訪問。産地調査や買い付けに奔走している。

 ただ、カラフトシシャモは最近、ロシア国内でも薫製やオイル漬け用に引き合いが強まっている。サハリン西海岸で漁を行うアレクサンドル・パクさん(35)によると、今年の浜値は日本円に換算して1キロ90円で、3年前の2~3倍。北欧付近のロシア産も取れなくなったのが原因で「ロシアの業者が高値を提示して争奪戦を繰り広げている」。

 一方、日本向けには品質面でも課題がある。アイスランドなどの漁が沖合で行われるのに対し、サハリンは産卵のため砂浜に近づく魚を定置網で漁獲するため、えらに砂が入ってしまうことが少なくない。日本人に好まれるメスとオスを分別する装置も極東の一部地域にしかない状況だ。

 サハリンに1カ月以上滞在し、買い付け先を探っている東京の水産商社は「漁獲日ごとの仕分けなどを求める品質管理に対応してくれず、慣れない商習慣もあり条件に合わない」と嘆く。

 サハリンでの漁獲量は年間5千~1万トン。他の極東を含めても毎年20万~30万トンを漁獲してきた北欧には到底及ばないとみられる。

<ことば>カラフトシシャモ 北海道太平洋側で漁獲されるシシャモと同じキュウリウオ科だが別の魚で、英名はカペリン。北大西洋やロシア極東など高緯度の海域に生息する。体長12~20センチで、子持ちが人気の日本には主にメスが輸入されている。2018年の輸入先はアイスランドが6割、ノルウェーが3割を占め、残りはカナダなど。魚卵は、とびこ(トビウオの魚卵)の代わりに珍味やすしなどに使われる。

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