内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

人も見ぬ春

2016-01-01 16:15:49 | 詩歌逍遥


人も見ぬ春や鏡のうらの梅

 元禄五年(1692)元旦の芭蕉の句である。
 鏡の裏の飾り模様の梅になど誰も気を留めない。そんなところにひっそりと訪れる春を寿ぐ一句。移りゆく季節を映す鏡の裏の、変わることなく密やかな見えない春にこそ詩魂は感応する。
 公私ともに多事が予想される今年、この句の心を忘れないようにしたい。