内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

人類世が地球最後の地質年代にならないために

2016-08-16 16:58:41 | 哲学

 現在私たちが生きている地質年代は完新世であるが、人間の諸活動が地球環境の変動にとって決定的な要因として作用するようになった産業革命以降を特に「人類世」(フランス語では « anthropocène »)と呼ぶことを提唱する科学者たちがいる。その厳密な定義はまだ定まっていないようだが、少なくとも、二十世紀以降の地球環境をそれ以前の地球環境と区別して考えなければならないほど、ここ百年余りの人間の諸活動が地球環境を左右する重大な要因になっていることは何人も否定することができないであろう。
 そしてつい最近まで、あるいは現在もなお、人類世は取りも直さず人間中心主義(anthropocentrisme)の時代であったと言わざるを得ないであろう。そして、もしこのままそうであり続けると、人類世は地球最後の地質年代ということになってしまうかもしれない。しかも、人類世が人間中心主義を超克する新しいパラダイムを内在的に構想することができなければ、その終焉はそれほど遠い未来のことではないのかも知れない。
 人類ははたしてそのパラダイム構想の責任主体であり得るのだろうか。