フランス語には、英語と同様、 « trans- » という接頭辞がある。語義は、大きく二つに分けることができる。一つは、「~を超えて」、もう一つは「~を通じて」である。この接頭辞が付いた語は多数ある。二つの意味のうち、どちらか一方の意味あるいはいずれかに明らかに重点が置かれている語の場合、例えば、 « transcender » は前者の意味、 « transpercer » は後者の意味で機能しており、それに応じて訳語も考えればよい。
ところが、どちらとも言えない、あるいはむしろ両方の意味を兼ね備えている用語法がある。シモンドンにおいては、 « transindividuel » « transduction » が、マルディネにおいては、« transpassible » がそれに該当する(2016年3月15日の記事参照)。その他に « transhumain » を他の例として加えてもいいだろう。
これらに共通する両義的な接頭辞 « trans- » が付いた術語が現代の哲学の鍵概念になっているように私には思われる。