内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

散読中言葉拾い

2020-05-28 23:59:59 | 読游摘録

 今日の記事は、散読中、心にとまり、拾った言葉や句の羅列に過ぎません。季節外れもあります。

「酔眠」 酒に酔って寝ること。酔臥(すいが)。

「命なりわづかの笠の下涼み」 芭蕉。延宝四年(一六八〇)。三十三歳。

「雁やのこるものみな美しき」 石田波郷(一九一三-一九六九)。

「秋深し 柿も熟した おじいちゃん 死ぬな」 (上田閑照『哲学コレクションI 宗教』岩波現代文庫 二〇〇七年)。 「たまたま目に触れた子供の句」(三頁)だそうです。

「どの子にも涼しく風の吹く日かな」 飯田龍太(一九二〇-二〇〇七)。

「梢をふり仰ぐと、嫩葉のふくらみに優しいものがチラつくやうだつた。樹木が、春さきの樹木の姿が、彼をかすかに慰めてゐた。吉祥寺の下宿へ移つてからは、人は稀れにしか訪ねて来なかつた。彼は一週間も十日も殆ど人間と会話をする機会がなかつた。外に出て、煙草を買ふとき、「タバコを下さい」といふ。喫茶店に入つて、「コーヒー」と註文する。日に言葉を発するのは、二ことか三ことであつた。だが、そのかはり、声にならない無数の言葉は、絶えず彼のまはりを渦巻いてゐた。」 原民喜「永遠のみどり」(一九五一年)

「父のごとき夏雲立てり津山なり」 西東三鬼(一九〇〇-一九六二)。

「万緑やわが額にある鉄格子

 昭和二十九年作筑紫保養院の作。
 杉田久女の終焉の地を弔うことは長年の念願でしたが、なかなかその機に恵まれず、絶えず心にかかっておりました。偶々「自鳴鐘」の好意によって、それを実現することが出来ました。医学博士である横山白虹氏が同行されましたので、つぶさにその当時の模様を院長から伺えました。
 久女終焉の部屋は、櫨の青葉が暗いほど茂り、十字に嵌る鉄格子は、私の額に影を刻みつけました。」『橋本多佳子全句集』(角川ソフィア文庫 二〇一八年 「自句自解」より)。橋本多佳子(一八九九-一九六三)。